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Aska Temple

All about John Ubel and Aska Temple

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古井戸の神水

古井戸の神水


                   John Ubel


 第1章
    村の住宅地

 ヨハンが八歳の頃、Villageに住宅地ができた。悪徳不動産業者の建てた、違法建築だ
らけの破格的に安い、一戸建て住宅地だった。その住宅地に入居者が入りだした。子供
達が村の小さな小学校に通い出した時、水道水が引かれていない事が解った。蛇口から
は魚の骨等のゴミが流れて、断水状態が続いた。都会から引っ越してきた子供達は、田
舎の小学校で我がもの顔で振る舞い、母親達は、まるで植民地に移って来た植民者のよ
うに大きな顔で、
 「私たちが都会のスタンダードだ。」
と言わんばかりだった。実際は、大阪で貸家暮らしの、大阪ではまともな家が買えない
人々が、激安の違法建築物件を買っただけの人々だった。


 第2章
    John Matthewというペンネーム

 十歳の頃、或るアニメーションが放送された。ヨハンが三歳の時、書いた原作をもと
にしていたが、脚色だらけのアニメーションで、ヨハンが書いたものとは全然違うもの
だった。ヨハンは観ず、大阪のロックバンドの出演するロックショウを観ていた。それ
までヨハンを田舎の男の子と目もくれなかった大木という女子が、サインしてくれ、と
ヨハンに迫った。ヨハンは学校ではローマ字しか習っていないのに、
 「John Matthew」
と、英語の筆記体でスペルを書いた。何故、英語の筆記体を自分が書けるのかわからな
かった。大木は、大阪の友達がもう一枚欲しがっているから、また書いてくれと、サイ
ン色紙を持って来た。でも、その時は、ヨハンはもうサインを書けなかった。十一歳に
なると、大木は友達と一緒に、ヨハンの家の二階にあるヨハンの部屋にどなり込むよう
になった。一冊の本を、大木はヨハンに手渡した。それは、三歳から五歳にかけて、ヨ
ハンがある著名な漫画家と共作し、将来があるからと、共作者としてサインしなかった
アニメーションの原作だった。本のタイトルには、John Matthewと、ヨハンのペンネー
ムが使われていた。やはり脚色が施されてあり、ヨハンの書いたものとは、かなり違っ
た。




 第3章
    古井戸の神水

 エレキギターの弦を張り替える間、大木は友達と、ヨハンの暗い部屋で待っていた。
まだ小学生のヨハン達は、男女の区別もあまりなかった。飼っていた猟犬と一緒に、山
奥のヨハンの山まで走った。みんなで渇いた喉を、古井戸の神水で潤した。大木と女友
達とヨハンが三人で歩いているのを、フィールド達は囃した。ヨハンと大木はまだ子供
だ。ヨハンは大木達を街道まで送って行った。
 フィールドはその後、古井戸の神水の蓋を外し、古井戸の神水は汚れて、飲めなくな
った。昔、ヨハンの水田のそばに、仙人が住んでいて、養鶏を生業にしていた。古井戸
の神水は、その仙人の神水だった。その仙人は、村の池に大きな錦鯉を何十匹も放した。
フィールド達は、池水を放流した際、鯉を生け捕りにした。錦鯉達は、貯水池で全て死
んだ。


  第4章
     消えた著作権料

 或る日、大木が、アニメーションと本の原作の著作権料の仲介をすると、まだ十一歳
のヨハンに話しかけて来た。大木の母親が、原作者を探しているという情報を聞きつけ
て、仲介を買って出たのだ。ヨハンは、
 「全額ユニセフに寄附してくれ。」
と、頼み、大木の母は、100万円だけユニセフに寄附した。ヨハンが原作者としてクレ
ジットされたアニメーションと本は、ベストセラーとなっていた。大木の母が仲介した
著作権料は1億円あった。大木の母は、そのうち、ヨハンの申し出た、ユニセフへの寄
附を100万円だけ支払い、あとは、大木家の財産になった。まだ小学生のヨハンと大木
との間には何もなかった。ただ子供の男の子と女の子の違いもない、小学校の級友でし
かなかった。
 中学校も大木とヨハンは一緒の学校だったが、ヨハンと大木はお互いを避けた。たま
に、大木は、ヨハンに聴こえるようにわざと、
 「このままでは家は泥棒になってしまうじゃないの、どうしてヨハン君に近づいたら
いけないのよ。」
と大声で叫ぶ事があった。ヨハンはその言葉の意味がわからなかった。大木は父親の転
勤で山口に引っ越し、山口県の高校に通った。ヨハンは大阪の男子校に進学した。


 第5章
    田で吐く大木の母達

 二十一歳になったヨハンが、大学の夜間部から帰って来て、就労と就学を同時に続け
るのが困難になり、遂に自殺未遂を図った。大木家はまたVillageに帰って来ていて、ヨ
ハンが大学の二部にしか通っていないのは、婚約不履行に等しいと怒り出したからであ
る。そのような家は何軒かあった。子供の頃のヨハンはロックとスポーツに夢中で、女
の子の誰ともキスもした事すらない、ましてや、将来結婚しようと約束した相手はいな
い。九歳の時、転校してきて、またすぐ、転校していった水谷という女の子に、教室全
員が書いた手紙に、二度と会う事はないだろうと、良い思いでにするために、そのよう
な事を書いたが、破り捨てた。その手紙は誰かがゴミ箱から拾い、ジグソーパズルを組
むようにセロハンテープで貼付け、本人に渡していた。水谷がVillageに帰って来ていた
のも知らなかった。ヨハンが大学の二部にしか進学しなかった事を憤る全ての人々は、
大木の母が、ヨハンの著作権料を横領した金で、豪遊三昧を繰り返していた人々だった。
大木の母達は、ヨハンの著作権料で、子供達の大学進学費用を捻出しようと企んでいた。
ヨハンは、十七歳の時、五歳の時書いた、アニメーションの原作が、アニメ化され、SF
研究会の友人に仲介してもらい、無事、全額多額の著作権料がユニセフに寄附された。
大木の母達は、その金をヨハンが持っていると思い込み、成人した娘達を、ヨハンにぶ
つけて再び金を盗ろうとした。
 「私にも5000万円、私にも5000万円。」
水道の蛇口から魚の骨しかでてこない、激安の一戸建てしか買えない人々は、異様に欲
深かった。自殺未遂を図ったヨハンの部屋のそばの田で、大木の母達は、反吐を吐いた。

その後、John Matthewは既に他界した、と公には伝えられた。


 第6章
    破産した大木達

 ヨハンは、四十二歳になった。同年代の女子達は、既に結婚して大きな子供達がいる。
そんな時、Villageのヨハンの家の前の田で、吐いた大木の母達が連鎖破産した。破産し
てもなお、ヨハンへの言いがかりを辞めず、連日連夜、車で昼夜問わず、罵声の限りを
繰り返し、ヨハンの安眠を妨害し、安住権を妨害し、そして、
 「出て行け。」
と、まるで大木の母達の破産が、ヨハンのせいかのように、大声で怒鳴り散らす日々が
続いた。ヨハンは返却された祖父の特許料を使って、第三者を仲介し、その人達の不良
債権を買い、そして東京の不動産屋に、半額で売却し、そしてオークションでは、不良
債権の二倍の値が付いた地点で、不動産業者はオークションの広告料で1億円のマージ
ンを取り、債権をヨハンに返した。ヨハンはそんな債権など要らない。債権など放棄し
たい。しかし、第三者は、ヨハンがその債権を放棄したら、不良債権者が、家を追われ
る事になるから、債権を持っているよう指示する。ヨハンはキリストでも、聖職者でも
宗教者でもない。何故、子供の頃の自分のギャラで贅沢三昧な暮らしをしてきて破産し
た不良債権者の債権など持っていなければならないのか。ヨハンは最近、横領を当然の
ように思っている不良債権者達は、人間としての理性に欠けている、同じ人間ではない
ように思うようになった。

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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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