Aska Temple

All about John Ubel and Aska Temple

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冬の夕闇の或る風景

 冬の田舎街の駅への階段前、

セミロングの髪とロングコートとブーツの青年に、

女がひたひたと近寄る。

「わぁ、そっくりさん。」

青年は在りし日の少女と同じ顔の女を見た。

「びっくりした。なんでこんなとこうろついてんねん。

芸大にでも用事あったん?」

「今何時やと思ってるねん?早よ帰り、お母さん心配してるで。」

女は瞳を潤わせる。

以前の少女は大人の女になっている。

「何やいまさら

ここ大阪ちゃうねん。

人の目が厳しいねん、

痛い目に遭いたなかったら

早よ帰り。」



 青年は自分でも不思議なほど冷静に女を以前同様説教した。

女は小さな声で呟く。

「やま」

それはその女が少女だった時、

青年のピアノを聴きに来た、

ジャズ喫茶の名前だった。

「いい加減にしろ。

今の自分何やと思ってるねん。

あんな危険なとこ、

女づれで歩けるか。

遅うなっても千里山まで送っていかれへんやんか。」

背後で、

「それこそ俺が帰られへん。」

という或る女の声、

「それこそ俺が帰られへんやんか。」


「悪い事言わん、

早よ帰れ。

さあ行った行った、

二度と来るなよ。」

女は走ってホームに消えた。




春の駅の改札口で


 髪を短く切ったロングコートとブーツの青年。

以前、腰まで伸ばした青年の長髪を覚えている人も多い。

視力が悪くて、切符の料金表を必死に見ている。

青年が切符を買おうとした時、

遠くから或る女が、青年をみつめている。

その時、突然

「これ以上近づいたら、

ストーカー防止法違反やで。

女のストーカーなんて恥ずかしいと思わんのか?」

と、大きな別の女性の声が改札口に響く。


 女は背中を向けて改札口に、定期を入れる。

女の前から、

「こんな時間まで何やってんねん。

寄り道せんと、まっすぐ帰りや。」

と、大きな男性の声が響く。


 女は何重にもいさめられ、

恥ずかしそうに、すごすごとホームに消えた。

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テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学

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