Aska Temple

All about John Ubel and Aska Temple

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MOON TEMPLE ライナーノーツ by 田中浩一

「『月の裏側』についての音楽的考察」  
                  田中浩一

 僕は「他界」という言葉が好きだ。「亡くなった」「死んだ」という言葉が鋭角的に響くのに対し、「他界」とは、現実とはこの目に見える世界だけではないという”異界”を含める巨視的な視線が顕現する。僕がなぜこんなことをいきなり述べたのかと言えば、丁度シドバレットのことを想っていた時に、John Ubelから、この新作CDが届いたからだ。
 思えば60歳にして他界したシドバレットのカラフルにしてサイケデリックな曲の数々を世間では、狂気の産物とかドラッグ幻想と称して語るが、その特異な旋律、シェーンベルグの十二音階を早回しにしたようなめまぐるしい変幻自在さは、むしろ正気(正常)だからこそと思えるのだ。2006年7月7日に他界した彼を想っていた丁度その時に届いたAska Templeの新作は、John Ubel 曰く、”月の裏側にある都市”をテーマコンセプトにしていると言う。僕はまっさきに、例の怪物的セールスを出したピンクフロイドの”ダークサイドオウ゛ザムーン”を想った。そして新作を聴いた。傑作である。Ubelのシンセギターは、一層に繊細にしてうねる徹底したミニマリズムの極から一度解体させたかのようなダイナミズムを放つ。しかも明るい。明るすぎて深い酩酊状態を起こす程に。Pフロイドはかつて”ダークサイドオウ゛ザムーン”のアルバム制作時に「次作はオールインストゥルメンタルの現代音楽的アプローチのものになるだろう」と答え、紆余曲折の末にあの強いメッセージ性を放つ、言葉に重きを置いたものとなった。捨て去られた”オールインストゥルメンタル”を僕は想った。Pフロイドが捨て去った、もう一つの世界をずっと継承し展開し、深化させて行った果てにあるのがAska Templeの世界ではないのか。コンセプト的にも、そう言えばクラウスショルツも”ムーンドーン”と称する繊細的、しかしやや叙情的が過ぎるアルバムを出していたが、そのショルツに比べると、Aska Templeの方が勝っている。ダイナミズムと繊細さに於いて。
 僕はシンセギターのUbelやキーボード奏者の海賊放送91.5(Nicolai丸濱)とは親交が厚く二人共に、単なる神秘学ファンやオカルトファンとは次元が異なる程に、神秘思想や超自然学に造詣が深いことをよく知っている。特にNicolai丸濱は、陽性のキースエマーソンやPモラッツを凌駕する程の超絶テクでライヴ観客を唖然とさせるが、その底の徹底したペシミスティックでブラックユーモアに富む性質、精神は、恐ろしい程の”臨死体験への興味”に支えられている。そんな彼等が”月の裏側の都市”をコンセプトにするのだからつまらないはずがないのだ。テクノが巷に浸透し、トランスやアンビエント、ドラムンベースやノイズも消費されつくした感の強い現在の音楽シーンの中、そういった流行のウェーウ゛に乗っからずに頑固に己の道を極めるアーティストこそが認められる時期がもうすぐそこまで来ているはずだ。真のサイケデリア、真のオルタナティウ゛サイキックミュージックとしてAska Templeはもっと認められるべきなのだ。
 他界<ー>現実世界、彼岸<ー>此岸、狂気<ー>覚醒、こっち<ー>あっち、、、、
を往復する、否往復し”ここ””現実”に戻って来なければ優れた作品が作れない。”月の裏側の都市”を本当に見た者は、この現実に戻って、地に足を着けて作品を作るのだ。その往復をきっちりと、自分の足で歩いて実現できる者が作品を作るのだ。目に見えないものではあるが確実に存在するものを信じないものがどうして作品を作れようか?そういう問いかけを、真剣に投げかけるのがこの新作である。心して聴いて欲しい。そして音が鳴っている間は、魂を月の裏側に飛ばせ。トリップせよ。聴き終わったら、現実に地に足を着けて歩いてほしい。
 月の裏側おもひ鳥肌立つ腕を
      仔細に見れば百の尖塔
            (たなかこういち、短歌)


                          2008.3
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