Aska Temple

All about John Ubel and Aska Temple

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横領者達   第4回

横領者達   第4回

            Johann Sebastian Matthew Zdbac Ubel
弓武声慧


第4章    中田好子

中田好子  横領額 2億円   横領年月 1990.5


 中田好子は、Villageの中学校の英語教諭だった。マシューを特訓して、県の英語暗唱大会に、10位で入賞させた事もある。マシューを中学の生徒会長にさせたのも、中田好子教諭だったし、マシューをST.ANDREW'S BOY'S HIGH SCHOOLに入学させたのも、中田好子教諭だと、自他共に認める存在だった。いわゆる、マシューの恩師の一人が、中田好子教諭だった。
 1988年に、マシューが自殺未遂を図り、失敗して生き恥をかきながら、リハビリしているのを、中田好子教諭は、その怒りを何処に向ければいいのか解らなかった。そして、ついに、マシューが幼児期に、仕事をしていたスタジオの責任者を突き止め、1990年5月、「児童福祉法違反で訴える。」と、スタジオの責任者を脅迫し、2億円を横領した。
 もちろん、その2億円を、中田好子教諭が、マシューに渡す事はなかった。そのかわり、中田好子教諭は、平然と、マシューと、年一回、会い、マシューがロックミュージシャンとして、年ごと元気になっていくのを確認して、安心していった。深夜のTELに、嫌がりもせず、マシューの悩みを聴いていた、中田好子教諭は、家を2軒持っていた。共働きの夫婦とはいえ、2軒の家を購入し、維持し、固定資産税を払って行くのは、少し、考えにくい。マシューのケアの代金としては、2億円は高過ぎるだろう。中田好子教諭は、マシューという、爆弾のような元生徒を扱う代金として、2億円は正当な金額だと、開き直っていた。しかし、実際は、子供達と、海外旅行をする費用に、マシューの2億円を使っていただけだった。
 マシューはいくら元恩師とはいえ、2億円を横領した、この女の、利子を遡及計算し、帳簿に書き続けている。
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横領者達         第3回

横領者達    第3回
          Johann Sebastian Matthew Zdbac Ubel
弓武声慧

第3章   大木 冴子
   大木 冴子 横領額 9900万円    横領年月 1977.8
横領額 2億円      横領年月 1988.5
横領額 3億円      横領年月 1997.5
                  横領額 3億円      横領年月  2000.5
計   8億9900万円


 大木は、違法建築物件だらけの、蛇口を捻ったら、肴の骨しか出ない、水道水のひかれていない、悪徳不動産物件を買わされた、Villageの新興住宅地に、引っ越して来た人々の一人だった。冴子の娘、和子は、特に、村の小さな学校児童とは関わろうとせず、塾や冴子の経営する公文塾の勉強に忙しかった。
 やがて、或るアニメーションがTVで放映された。すると、大木和子は、マシューにサインしてくれ、とせがんだ。マシュー自身全く忘れていた、幼児期の漫画の原作のアルバイトが大きく脚色され、アニメ化されていた。マシューは英語の筆記体で、JOHN MATTHEWと書いた。
 JOHN MATTHEWが原作者としてクレジットされていた、漫画の原作も、また、ベストセラーになっていた。ラジオでは、
 「原作者を探している。」
との放送が流れた。
 大木冴子は、娘和子に
 「アニメーションの原作者の著作権料を仲介する。」
と、マシューに持ちかけさせた。
 マシューは、和子に
 「全額ユニセフに寄附してくれって、本人が言ってた、と伝えてくれ。」
と、言った。
 大木冴子が仲介した金は1億円あった。大木は、そのうち100万円だけユニセフに寄附し、残りの9900万円は、大木家の財産になった。

 大木冴子と和子が、1988年5月、マシューの著作権料を2億円横領したのは、マシューは、子供の頃の事を全く忘れ、立命館大学の夜間部の学生活動家になって、下宿のトラブルで実家に帰ってきていたときだった。
 「2部にしか行かなかったのは、婚約不履行に等しい。」
と、大木冴子は、マシュー家の向いで大声で怒鳴り倒した。マシューは大木和子と、特別仲が良かったわけではない。クリスマスや誕生日のプレゼントを交換したことなど、一度もなかったし、和子からヴァレンタインディのチョコレートをもらった事もない。マシューは、あのお金は、全部、大木冴子が、ユニセフに寄附してくれたものだとばかり、思っていた。違うかった。大木冴子は将来、娘和子と、マシューを一緒にさせて、横領を隠蔽しようと企んでいた。マシューは大木和子と婚約などしていない。ただ、大木冴子が、横領という犯罪を隠蔽したかっただけだ。大木冴子が再放送されていた、アニメーションの原作著作権料を、傷つけられた娘の彼氏だと言って、強引に2億円横領した。

 1997年5月、横領額3億円。

 1988年に自殺未遂した、マシューは、病院に運ばれ、一時廃人になった。大木冴子とマシューの向いの、West River バルナは、嫌な奴を金だけとって、廃人にさせた功績を競い合い、乾杯した。
 マシューはリハビリし、ロックバンド活動に励むようになった、アルバイトとバンド活動は順調だった。しかし、そのうち、JOHN MATTHEWは生きていて、ロックバンドをやっている、と噂になった。1988年、JOHN MATTHEWの葬儀は、盛大に行われていた。
 そんな時、マシューは、電器屋で働く、大木和子と再会した。しかし、マシューは、
 「お前の、目の前にいる男は、お前の知っている、マシュー君ではない。お前等が殺してんやろ。」
と、まともに大木和子と話をしなかった、大木和子は、電器屋のレジで、
 「お金を盗った上に、人殺しまでしてしまった。」
と、泣き崩れた。
 大木冴子は娘を泣かした慰謝料だといって、また再放送されていた、アニメーションの原作著作権料を、3億円、強奪するように、横領した。

 2000年5月、横領額3億円。

 大木冴子の経営する、公文塾で、子供達が、或るアニメーションの話をしていた。冴子の娘、和子は、もうとっくに結婚して、実家を離れている。大木は、
 「原作者を知っている。当時まだ幼児だった。これは、児童福祉法違反だ。」
と、難癖を付け、恐喝するように、3億円を横領した。
 その時、アニメーションのスタッフには、大木が仲介した、著作権料は、一銭もマシューに払われていない事が解った。それ以後、大木がどんなに催促しても、スタッフが、大木に著作権料を払う事はなかった。
 大木ら新興住宅地の似非マダム達は、マシューの著作権料で、豪遊三昧を繰り返していた。その著作権料が入らず、それでも、住宅地の似非マダム達の豪遊は続き、全員、2008年に自己破産した。

 



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資本の三位一体とパラダイムシフト

資本の三位一体とパラダイムシフト

            Johann Sebastian Matthew Zdbac Ubel
弓武声慧

 G-W-G(Geld-Ware-Geld),貨幣ー商品ー貨幣、という図式は、カールマルクスの「資本論」第1巻に出てくる、資本の図式である。まず、資本を投入し、商品を買う。
そして、その図式は、G-W-Gシュトリッヒ、より多くの貨幣を産み出す図式へと変わる。Gシュトリッヒは、デルタG分の剰余価値(mehr welt)を、Gに付加したGeldである。
 これは、マルクスが使った、三位一体の図式である。父なる神(Geld)-聖霊(デルタG)ー子なる神(Gシュトリッヒ)の資本の三位一体である。
 資本論(DAS KAPITAL)は、このように、中世論理学からヘーゲル論理学を多用した、聖書でいえば、ヨハネの黙示録にあたる、書である。
 資本の悪魔の三位一体が完全に世界を席巻した暁には、世界から、あらゆる封建制度がなくなり、新たなパラダイムへと世界はシフトチェンジする。何故なら、貨幣は平等でありかつ、民主主義的であるからである。
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ルソーについて

ルソーについて
        Johann Sebastian Matthew Zdbac Ubel
弓武声慧

 ルソーの「社会契約論」は、一般に解りにくい、と云われている。何度読んでも、ルソーの視点は、一貫していない。私は、幸いにも、マルクスの「資本論」における、剰余価値論、と同時期に、ルソーの「社会契約論」を読んだ。これは、ルソーからマルクスにいたる、一種のリレー的な読み方であった。
 「万人が、一人の独立した個人として、自由に平等に、社会契約する。」
それは、牧歌的な、封建領主の農場から、人々が解き放たれ、そして、産業革命が必要とする、工場労働者として、人々が、社会契約していく、姿でもある。
 ルソーは、苦悩していたのではないか?興隆する、ブルジョワ市民社会が要請する、古い、封建的貴族社会を、啓蒙し、ブルジョワ市民社会へと変えて行く、思想家として、サロンで活躍する、自分が、町人貴族達が、より高い身分、より多くの財産を得るために、利用されているのではないか?「自由」、ルソーが求めていたのは、「自由」であり、「社会契約」とは、ブルジョア市民階級だけが、自由で平等な社会である事を、ルソーは見抜いていたのではないか?それが、ルソーの苦悩だったのではないか?それが、「社会契約論」の解りにくさではなかったろうか?
 マルクスは、剰余価値論で、万人が平等に社会契約しているにも関わらず、労働者は、
一定労働時間内に、不払い労働が生じ、それが、社会契約上、違反しないシステムを、論じている。つまり、等価で契約した、労働者は、工場労働時間内に、剰余労働を価値付け、そして、生産過程を終えれば、その商品は、また等価で取引されるという、ロジックである。工場労働という、ブラックボックスを外せば、労働者も商品も、等価で取引される。さて、何処で儲けが出るか?ブラックボックス内の剰余労働によってである。これが、マルクスの剰余価値論である。
 マルクスは、ルソーの「社会契約論」を、アイロニカルに、使用し、近代の平等な取引の裏で行われる、一見平等でありながら、それは、ブルジョア社会のためだけの平等であり、自由である事を暴露する。
 ルソーの苦悩は、やがて、自分の仕事が、リレーされるだろう。マルクスのような人材によって、そして、その書には、自分の「社会契約論」がアイロニカルに引用されるであろう、という苦悩だったのではないか?ルソーが本当に探し求めていたものは、「自由」
でしかなかったのに。。。
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横領者達             第2回

横領者達      第2回

             Johann Sebastian Matthew Zdbac Ubel

第2章   福田 幸一

 福田幸一 横領額 3000万円  横領年月 1998.5


 福田幸一は、マシューが三歳の時、建てた教会で、シスターと戯れていた、農夫だった。マシューは、その一件の後、すぐ教会を閉め、移転させた。福田幸一は、そのままシスターと結婚した。
 福田幸一家は、貧しい農家だった。バラックのような家屋に、家族が住んでいた。正月でも畑を耕していたのが、福田幸一だった。
 そんな、福田幸一の前に、大木が現れた。
 「私たちの仲間になるんなら、3000万円あげるわよ。」
福田幸一は、そのまま大木と関係を持ち、3000万円を受け取り、死体焼却場に勤め、1000万円のローンを組み、邸宅を建てた。
 福田幸一もまた、大木から授かった仰せは、マシューの監視だった。
福田幸一は、2008年に死に、後には、1000万円のローンが残され、福田幸一家は破産した。
 
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横領者達           第1回

横領者達   第1回
       Johann Sebastian Matthew Zdbac Ubel
     

 序文

 マシューが、3歳と5歳の時に書いた、漫画やアニメーションの原作の量は膨大な量だった。そしてその原作群は、後に莫大な著作権料に膨れ上がった。しかし、その著作権料をマシューが、受け取る事はなかった。Villageの教育関係者や隣人達といった、全くの赤の他人達に、総額19億2千2百万円を、横領され続けた。


第1章  福田 善太

 福田善太  横領額 1億円  横領年月 2001.5

 福田善太は、退役した、小学校の教諭だった。マシューが小学4年生の時、Villageの小学校の教頭に赴任してきた。美術が専門のその、福田教諭は、マシューの遠近法が逆の絵を、展覧する絵に選んだ。やがて、福田教諭は、吉野のど田舎の小学校の校長になり、退官した。吉野の高校の寮に勤めるも、無茶苦茶な寮生の振る舞いに耐えきれず、農作業に従事する、ただの農家のおじいさんになっていた。無事、娘に養子をもらい、その養子は、小学校教諭として、出世していった。数千万円の預金が出来た福田家は、古くなった、家屋を貸し出し、山の上に、新築の邸宅を建てようとした。しかし、邸宅の計画は膨らみ、所持金では足りなくなった。
 そんな時、公文塾経営者、大木が現れた。
 「私たちの仲間に入るんだったら、1億円さしあげますわよ。」
大木は、1977年より、断続的に、数億単位の、マシューの著作権料を横領し続けた、張本人だった。福田は迷わず、大木の差し出す1億円を手に取った。そして、1億円のローンを組み、Villageの山に大邸宅を建てた。
 福田は、いつも、マシューのスタジオの廻りを、バイクでパトロールし、マシューの練習を、いつも監視した。
 2008年、福田家は、1億円のローンが払えず、破産した。
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主客の球面

    
主客の球面                    
      ヨハン ユーベル              
                    
 序文                   
 ヘーゲルの論理学は、主観的主観、主観的                   
客観、客観的主観、客観的客観が、それぞれ                    
円環的関係を築いていき、それぞれSSとSPと                    
の間の円、SPとPSとの間の円、PSとPPとの間                    
の円、そしてそれぞれの次元が独自円環関係                    
を錯綜していき、主観的主観と客観的客観が                    
大円団を組むという、スケールの大きな論理                    
学である。そしてそれは、SEIN(有)ーNICHT                    
S(無)ーWERDEN(成)という、存在が無化                    
して、生成するという、三位一体の媒介を伴                    
ったドラマティックな弁証法である。                    
                    
 第1部                   
 教団                   
                    
 第1章 五人の女官                            

    
 ヘブライ語や物理学などの、特殊教育機関                  
の試験を3歳でパスしたアベルは、或る特殊                    
な資格を得、3歳で特殊教育機関を卒業した。                    
先生が、施設にお泊まりに来なさい、と、特                    
殊教育機関の宗教施設で一晩を泊まった。                    
 アベルの部屋には、夜、5人の大人の女の                   
女官が、薄い羽衣だけを身に着けて待ってい                    
た。まだ3歳のアベルは、おどおどするだけ                    
で、何もできなかった。最初は、3歳児とい                    
えども先生だからと、緊張していた女官たち                     
も、アベルを見ているとからかいたくなり、                    
アベルの衣をめくって、                    
 「こんなおチンチンでは何もできないわよ                    
ねえ。」                    
と、笑った。                    
 女に馬鹿にされたと思ったアベルは、持っ                   
ていた大きな十字架で、女官達のウ゛ァギナ                    
を次々と犯していった。                    
 「キャぁー、何すんのこの子」                   
女官達の悲鳴がこだました。                            
アベルは、5人の女官達のウ゛ァギナを次々                    
と十字架で犯し続けながら、羽衣からもいだ                    
胸と胸、十個の乳房を、次々と噛んでいった。                    
                    
 第2章 宗教道場                   
                    
 その宗教道場は、各宗教団体の先生や、お                   
金持ちが、悩みを打ち明けに来る道場だった。                    
ポンポン、ポンポンと、両手でピアノを弾く                    
ように、指を打つ宗教の先生達に、道場の女                     
先生は、どやしつけた。                    
 「キリスト教かてこんなもんかよ。」                   
それは、関係を持った異性の数だけ指が鳴る                    
修行だった。アベルは3歳の先生として、道                    
場に勤めていた。あるお金持ちが、                    
 「ポンポンポンポン。」                   
と、指を打っていた。SMで女を縛るその男の                    
姿が浮かんだ。                    
 「変態や、ほんまに女の人縛って蝋燭垂ら                   
してる。」                                     
 「そりゃ恨まれるわ。労働者苛めるからや                   
ん。」                    
そのお金持ちの妻は、不良債権者に困ってい                    
ると、大先生に相談していた。アベルは、                    
 「そんな不良債権放棄して、みんな刑務所                   
にブチ込んだったらええねん。SMばっかりや                    
ってるのも疲れるやろ。」                    
 「何ですって、あの人達みんな刑務所に入                   
れろですって。」                    
 「何ていう人なの、あなたには三百円も払                    
いたくありません。」                    
 アベルは宗教道場を解雇された。                   
                    
 第3章 核実験ショウ                   
                    
 十七歳のアベルが、二度目の儀式を、アン                   
デレ教会で受けた夕、アベルは感じの良い青                    
年の車に乗ってドライヴした。着いた先は、                    
神戸の或る教会だった。そこでは、或るオペ                    
ラのような儀式のセットの準備で大忙しだっ                       
た。アベルは、即座にその儀式が何であるか                    
理解できた。先生がアメリカに渡る前に、ア                    
ベルに予告していた或るショウだった。                    
 円形のソファーの下には、大掛かりな核装                   
置があった。難しい物理学数式を使う実験だ                    
が、原理は簡単で、磁石の反作用と同じ。核                    
の反作用で浮く実験だった。被験者は、健康                    
な結核患者なら誰でも良かった。アベルが選                    
ばれた。ウラニウムのロケットが渡され、ア                    
ベルは、ソファーの上に寝転んだ。儀式が始                     
まり、VTRのフィルムが回された。オペラの                    
ように、女性達のコーラスが鳴り響く、大掛                    
かりな核装置が動きだし、アベルの寝転んだ                    
円形のソファーは宙に浮いた。その時、アベ                    
ルの頭には、小さい頃詰め込んだ、物理学数                    
式が浮かんだ。一度、アベルのソファーが降                    
ろされると、車椅子の半身不随のシスターが                    
立ち上がった。立ってアベルと性交しようと                    
した。スタッフは、性交しているアベルとシ                    
スターをもう一度、浮かべようとしたが、ア                     
ベルはびっくりしてそれどころではなかった。                    
儀式は中断し、アベルは飛び跳ねて帰った。                    
核の微量の放射を受けた身体は軽く、何kmも                    
ある駅までの道のりを、追いかけるシスター                    
の車よりも早く走り、阪急電車が駅に着くと                    
同時にアベルは飛び乗った。シスターは改札                    
口まで来ていた。                    
                    
 第4章 神戸での或る出来事                   
                     
 神戸の或る教会での核実験で、宙に浮いた                   
後、逃げて帰ったアベルは、もう一度吸いよ                    
せられるように、その場を訪れた。洋館の建                    
ち並ぶ、花や蝶々が舞っている、洋館の街を                    
歩いていると、アベルの跡を、数人の男達が
つけて来ているのが分った。アベルが走ると、                    
その男達数人も走って追いかけて来た。特別                    
に大きな教会があった。エホバの王国会館だ                    
った。
 「助けてください。」                    
 「助けてください。」
アベルは、大きな洋館の扉をドンドンとノッ                   
クした。洋館の扉は開かなかった。そのうち                      
アベルを追いかけて来た男達の影は、もうな                    
くなっていた。                    
                    
 第5章 JOHN MATTHEWという名                   
                    
 アベルは、特殊教育機関にいる3歳の時、                   
アルバイトで、様々な漫画家の先生達と、た                                   
 くさんの漫画の原作に子供漫画原作者として、                     
ゴーストライティングしていった。ほとんど                    
は将来があるからと、ペンネームすら明らか                    
にしない約束のアルバイトだった。ただ一つ                    
だけ、ノヴァーリスやヘルダーリンの原書に                    
出てくる少女の姿を翻訳してカットアップし                    
た、少女漫画の原作だけに、ジョンマシュー                    
という自分の洗礼名をペンネームとして入れ                    
た。その漫画は大きく脚色され、1970年代                    
に一世を風靡した人気アニメーションとなっ                    
た。そして、アベルのギャラの横領を巡って                    
ジョンマシューは死亡したと、公には伝えら                    
れる事態になり、実際アベルは、何度も死に                       
かけては、病院で蘇生した。                    
                    
 第6章 アベル成人後                    
                    
 エホバの証人のシスター達が、アベルの家                   
に乗り込んで来た。
 「あなたはJOHN MATTHEWなの?」
 「さあね、それはどうかな、でももし僕が                    
JOHN MATTHEWだとしても自分から、ジョン                    
マシューでござい、なんていう馬鹿が何処に                    
居てるんですか。」                    
 「何回も殺されてんのに。」                    
アベルは、                    
 「胸元を開けるな、スカートが短い、ロン                   
グスカートを履け。」                    
 「十字架を見せるために。」                   
と、シスター。                    
 「十字架は見せびらかすものじゃない。隠                   
しとけ、胸元までボタンを留めろ。」                    
というアベルに、                              
    
 「あなたには私たちの助けが必要です。」
とシスター達が言う。                    
 「助けなんかいらん。もう俺は大人の男や」                   
シスター達は、                   
 「神戸のエホバの証人のドアをドンドン叩                   
いて『助けてくれーぇ』って叫んだの誰よ。                    
あなたじゃない。」                    
アベルは、                    
 「あの時は、まだ子供やった。今は大人の                   
男や、独りでやれる。」                    
 「なんで男のロマンを否定しようとばかり                    
するんですか?勝手に主観的観念論やらせて                    
くれてもいいじゃないですか。」                    
すると、シスターの一人が、                    
 「誰にも迷惑かけてないし。」                   
アベルは、                    
 「誰にも迷惑かけてないじゃないですか。」                   
 「もし僕が、名誉の殉死を遂げてもあなた                   
達は犬死にだって笑うんでしょう。」                    
  「そんな客観いらん。女なんていらない                 
って言ってるんです。」                    
   
 「僕、ユダヤ系の血が入ってるけど、日本                   
人ですよ。」                    
 「日本人男子として悔いのない終わり方を                   
しようと、常々存じております。」                    
 「どうぞお帰り下さい。」                   
                    
                    
                    
 第2部                   
 ブラントゥーシュ教諭                    
                    
 第1章 山田洋次の虚実                   
                    
 『山本周五郎、山田洋次は、ある意図を持                   
って庶民生活を美化する。山本周五郎のあか                    
ひげという医者は、市井の人のために奉仕す                    
るインテリとして描かれる。しかしそれは、                    
インテリの思い上がりである。市井の人のた                    
めに、などという言葉ほど、庶民を馬鹿にし                    
た言葉はないのではなかろうか?また、一連                      
の山田洋次の寅さんシリーズもそうである。                                  
明らかに、寅さんがあちこちでやっているの                    
は、縁談婚姻妨害なのである。寅さんが責任                    
を取って、嫁にもらうのならいいが、寅さん                    
は責任を取らない。これは、昔のインテリが                    
庶民の世界に幻想を抱き、庶民の世界に何か                    
崇高な哲学でもあるかのようにみせかける、                    
一種のプロパガンダである。其処にあるのは、                    
庶民の生活に対する、インテリの思い上がっ                    
た侮蔑しかない。この二人のプロパガンダに                     
騙されてはいけない。庶民も良い縁談につく                    
権利もあるし、庶民だからといって、インテ                    
リに蔑まされなければいけない理由などない                    
のである。庶民もオペラのCDを聴いても良い                    
し、崇高な哲学や学問を自分でやっても良い                    
のである。おわかりだろう、山田洋次らは一                    
見、庶民の生活を美化しているように見える                    
が、じつは、人情芝居を使った、巧妙な愚民                    
化政策の一環なのである。騙されてはいけな                    
い。』                                   
   
「あの民青、私ら早稲田の中核派のやって         
きた事全面否定しやがって。」                    
 「アベル、『幸福の黄色いハンカチ』は?」                       
 「そっちの方がシュールリアリズムちゃう                   
ん?」                    
 「そうやって、伏線を貼って」                   
山野と中口は、卒業前、マクドナルドで、映                    
画のストーリーを練っていた。アベルの小説                    
を持っていくと、自主映画の音楽の作成を頼                    
まれた。軽い返事で答えたが、これからの自                    
分達は、そんな文化活動どころじゃない浪人                    
生じゃないか、と思ったが、この二人に直接                    
には言わなかった。公園に女優役の女の子を                    
連れて来て山野と中口は、
 「会わないか?」                    
と、電話をかけてきた。アベルは髪を自分で                      
切り、とても女の子に会うような格好ではな                    
かったので会わなかった。                    
                    
                    
 「待つも待たんも、あんな人の殺し方して                     
嫁がそのまま家におったら、滅茶苦茶な目に         
遭わされて、これでもか、これでもかって、                    
ずっと酷い事が続く。それでもあんなに嫁さ                        
んが綺麗やったら、トルコにも売り飛ばされ                    
てずっとや。」                    
 「人殺ししといて、あんなに早よ帰れるわ                   
けないやんか。女房もし待ってても、お婆ち                                  
ゃんや。トルコの掃除婦でもしてるわ。」     
 「お前、大人の話しの読み過ぎや、一体ど                   
んな本読んでんねん。」                    
先輩のガロアが怒った。                    
 「なんや、大学生なんかそんな世間知らず                   
のお坊ちゃまばっかりかよ。」                    
 「高い学費払って、阿呆になりにいくんや                   
ったら、俺、大学なんか行きたないわ。」                      
 「お前。俺等に喧嘩売ってんのか」                   
先輩達は、怒り出した。                    
 「せや、喧嘩売ってんねん。阿呆お坊ちゃ                   
まの大学生に喧嘩売ってんねん。」                    
 「俺に、何か言いたかったら、畑仕事の一   
つでもしてからにしてもらおうやないか。」         
その時、店主が、                    
 「ヤクザ。ど田舎もんのヤクザの息子」                       
と、叫んだ。すると、サークルの女性が助け                    
舟をだした。                    
 「確かに、この子の言う通りやわ。」                   
 「私やったら、すぐ逃げる。あんなん男の                   
幻想や。」                    
そのお姉さんの発言で、その場は何とか収ま                    
った。                    
                    
 第2章 ガロア                   
                    
 ガロアの大学院受験勉強の助手をアベルが                   
している。                      
 「働いてんのがそんなに偉いんかよ。」                   
と、ガロアが言い出した。                    
 「なんや。マルクス経済学者になるって、                   
基本的な事、何にも解ってないやん。」                    
 「働かんな、どうやって金稼ぐねん。お金  
   
天から降ってくんのか」         
 「今のあんた、東大、京大の革マルと一緒                   
や。そんな事では、将来ロクな事にならんで                        
ぇ。」                    
 「悪い事、言わん。近代経済学に乗り換え                   
なさい。」                    
 「何、しょうもない事にこだわってんねん、                   
近代経済学者になって、ブルジョワの犬みた                    
いな経済学者になった方が、ええ生活できる                    
やん。」                    
 「ええ生活できた方がいいやんか。」                   
ガロアは近代経済学者になった。                                        
 ガロアの友人、城本が、アベルの部屋を訪                   
ねて来た。
 「西野プロダクションって酷いんだよ。宇                      
宙戦艦ムサシの版権買い取る時、ちゃんと共                    
作者に著作権料払うって約束して、一銭も払                    
ってないんだよ。本人は大学の二部に働きな                    
がら通ってるんだよ。酷いよねえ。」                                     
「もしかして、アベル君が、その二部に通         
ってる共作者?」                    
 「だったらどうやって言うねん。あんなギ                       
ャラまた俺に廻ってきても、また全額ユニセ                    
フに寄附したる。金持ってないからできる勉                    
強もあんねん。」                    
 「漫画の著作権料で儲けようなんていう人                   
間は、みんな人間のクズだ。」                    
そう言い残し、城本を部屋に置いたまま、ア                    
ベルは、夜間の講義に出た。                    
                    
 第3章 葬儀                   
                    
 アベルは、ブラントゥーシュ教諭の葬式に                   
出なかった。しかし、ブラントゥーシュはア                      
ベルの周りで、いつも生きていた。                    
 1998年、二度目の、JOHN MATTHEWの葬                   
儀が行われ、その葬儀を執り仕切るのは、死                   
んだはずのブラントゥーシュだった。                    
 ブラントゥーシュの声がいつも聴こえる。                      
自殺未遂するアベルの妄想は、本当にアンゴ         
ルモアの大王が、日本に降る夢だった。日本                    
各地が、アメリカのユダヤ人によって、途方                        
もない金額で買い取られていったゲームだっ                    
た。その時、日本の株価は限りなく落ちてい                    
た。
 2007年、ブラントゥーシュの墓が建てられ                    
た。アベルはアンデレ教会から、ブラントゥ                    
ーシュの霊のお守りを、お役御免となった。                    
                    
                    
 第3部                   
 洋美                   
                    
 第1章 ドルム                   
                      
 風俗店主の女主人に、                   
 「どの娘にしますか?」                   
と訊かれ、                    
 「あなたがいい。」                       
とアベルは言うと、羽衣の女官姿で顕われた         
洋美。                    
 三歳のアベルが、トルコ嬢のウェディング                       
ドレスの裾を持って歩く。                    
                    
 「私の事、汚い女だと思ってるんでしょう                   
。」                    
洋美は、スリッパをドアに蹴飛ばした。アベ                    
ルは次の日、ギターを持って来て、洋美の部                    
屋で、                    
 「神様の御使いの女の子、Ich liebe dich」                   
 「洋美さんは、スリッパを蹴飛ばす。」                   
                    
 「だって、腹が立ったもん」                   
洋美とアベルは仲直りした。神様の巫女であ                      
る洋美の乳頭は、何年通っても、ピンクのま                    
まだった。                    
 「今日は、何の役をする?」                   
 「熱愛中のカップル」                   
アベルと洋美は激しいキスをし、抱き合った。 
   
ねじれる唇の舌が絡み合い、アベルは洋美 の         
大きな胸を掴み、揉みほぐし、ドレスの胸の                    
中に指を入れ、乳頭を弄った。一瞬、二人の                        
息は途切れ、いつものように、シャワー室へ                    
と移動していった。                                       
 ドルムのエアコンの修理のため、閉店して                   
いた時、一階下の店に入った。長く待たされ                    
た。出て来た女は、バレー部にも所属してい                    
たかのような快活な女だった。その店は下着                    
を履かない。キスをした。女が舌をグルグル
巻きに絡ませてきた。69をいきなりして、ア                    
ベルが下になった。ぼろ雑巾のような黒い襞                    
のついた何重にも重なったそれは、液体を光                    
らせていた。舐める気にはならなかった。ア                      
ベルの右手は、クラシックギターを弾く為に                    
爪を伸ばしている。                    
 「本番はダメよ。」                   
アベルは、女の黒く長く大きな乳頭を吸った。                    
きつく吸うと女は大きな声を出して喘いだ。                                                                                    
   
無事、自分で事を済ませた。シャワー室で、         
アベルは自分の唇を拭いた。女が哀しそうな                    
顔をすると、                        
 「いや、口紅とってるだけだよ。」                   
と、慰めた。                    
 その女、ひかりとは、1階のエレベーター                   
の前で再会する事があった。大きなウエスタ                                   
ンブーツでさっそうと歩いて来た。    
 「また私のとこにも来てよ。」                   
と、相変わらず快活な笑みを浮かべた。                    
                    
 「今日は何の役をする?」                   
洋美は女子高生の格好をしていた。                    
 「ドイツ語の教師と生徒。」                   
 「ドイツ語の定冠詞の男性格変化を言いな                     
さい。」                    
 「そんなんわからへん。」                   
 「der des dem den やろっ」                   
 「女性格変化を言いなさい。」                   
 「わからへん。」                   
   
「die der der dieやろっ」         
 「しゃないなあ、ドイツ語のアルファベッ                   
トを言いなさい。」                        
 「わからへーん」                   
 「アーベーツェーデェーやろ」                   
 「このぉーお仕置きじゃあ」                   
アベルは、洋美の胸を鷲掴みし、スカートを                    
捲って、下着を弄った。                    
 「きゃー。この人変ですぅー。」                   
                    
                    
 「今日は、何の役をする?」                   
洋美は女教師の格好をして、眼鏡をかけてい                   
る。                    
 「同僚の男性教師と女教師。」                     
 「まあ洋美先生、よろしいじゃないですか。                   
同じ教師同士。」                    
アベルは、洋美の大きな胸を弄り、スカート                    
の中に手を弄った。                    
 「辞めて下さい。私は古風な女でございま                 
   
すから。」         
アベルは洋美のボタンを外し、ブラウスの中                    
に手をまさぐり、乳頭を弄った。                        
 「辞めて下さい。先生。」                   
そして、二人はまたシャワー室に移動した。                    
 アベルは洋美に逢うため何度もドルムに通                   
った。客が多い時、アベルが待っている喫茶                    
店で、女子大生が、                    
 「アレのアレやねえ。」                   
と笑った。死んだはずのJOHN MATTHEWが天                    
王寺をうろついている、という噂が、天王寺                    
の女子大生の話題になっていた。                    
 もはや、アベルと洋美は友達だった。一度                   
店の外で逢おうとして、ほんの数分間だけ、                    
しゃべって、シャンプーとリンスをもらった。                      
一緒に、そこで見ていた洋美の従兄弟のお兄                    
さんが、                    
 「おかしいなあ、あの兄さんまだ若いのに                   
もう高校生の子供がいる。」                    
 「おかしいなあ、そんな男の子の歳で子供                   
   
できるんかなあ。」         
 「おかしいなあ?」                   
と、洋美にぶつぶつ呟いた。                        
 その空山という、洋美の従兄弟のお兄さん                   
は、大正天皇の手のついた女官の子孫で、子                    
供の頃、稲荷神社の水をかけただけで、交通                    
事故で、頭が開いた人を、自分の足で、病院                    
まで歩かせた。霊感を持った、大峰山の修行                    
者だった。                    
                    
 アベルと洋美は長谷寺をデートした。以前                   
の二人は目立ち過ぎて、店外デートしたら、                    
洋美は、店のママさんから怒られるぐらい、                    
目立つカップルに見えただろう。髪を切った                    
清楚な洋美とアベルを、通りすがりの人々は、                      
良い感じを持ったろう。二人はそんなカップ                    
ルに映った。長谷寺のベンチで、二人はお互                    
の身の上話をした。洋美は北野高校に進学し                    
たが、あまりにも数学の授業が難しく、他の                    
高校の先生に教えてもらってたとかいう身の                    
   
上話をした。大阪の進学校で出来が悪かった         
のは、アベルも同じだった。                    
 「あっUFO。」                       
洋美が騒いだ。アベルと洋美の頭上にUFOが                    
飛んだ。                    
 「俺でUFOなんて当たり前やん。」                   
 「見て見て、秋の桜の木に桜の花が咲いて                   
るでぇ。」                    
秋の桜の木に桜の花が咲き乱れていた。する                    
と、坊さんが、洋美を咎めるような目つきで                    
睨んだ。                    
 「お前、尼やろ。何、男とデートしてんね                   
ん。」                    
と、坊主はテレパシーを跳ばした。洋美は、                    
 「すみません。」                     
と、テレパシーで謝った。そのデートの後、                    
二人は二度と会う事はなかった。                    
                    
 娘の美加に、子供が産まれた時、洋美がモ                   
ンぺ姿でアベルの村を歩いていた。巫女の洋                    
   
美の聖霊としてのお告げの仕事だった。洋美         
が自分の自転車の前を歩いているのが、何か                    
異次元が出没したかのように、時空のズレた                        
瞬間だった。言葉を交わす必要もなかった。                    
 「アベル君、お孫さんお誕生おめでとう。」                   
洋美は、まだ以前と変わらず美しかった。                    
                    
                    
 第4部                   
 ROCK BAND                   
                    
 第1章 岡山                   
                    
 岡山市の外れまで、西田は大音量で、ゴア                   
トランスをかけながら、西田の家までアベル                      
を送った。                    
 「MACHINE HEADが俺の原点やねん。」                   
西田はDEEP PURPLEのリードギターを弾ける                    
奴と会いたかったと、アベルの相棒になりた                    
い、と申し出た。西田はベーシスト兼キーボ                    
   
ーディストだった。西田のおじいさんは、解         
放同盟の運動で、水平社運動史に名を残す、                    
闘士だった。西田は小さい頃、ピアノを習っ                        
ていたが、中卒で働きながら、いろんな人々                    
とバンド活動を続けていて、やっとまともな                    
ギタリストに会ったのが、アベルだった。                    
                    
 第2章 美奈代                   
                    
 ある日、友人の車の中で、以前はプログレ                   
お宅だったその友人は、今はもうパットメセ                    
ニーとユーミンと中島みゆき、しか聴いてな                    
かった。友人はカーステレオで、中島みゆき                    
の「みるく」という曲をかけた、女はふられ                    
る度に、みるく、と呼ぶ、BARのマスターに、                      
泣き言を訊いてもらう歌詞だ。みるく、は32                    
歳で、バーボンを飲むようになっていた。                    
 「俺もこんな女いてた。外人と付き合うの                   
が趣味で、ふられる度に、俺に泣いて電話か                    
けてくるんだよ。俺もちょうど32歳だった。                    
   
ウイスキー飲めるようになってたよ。」         
と言う、アベルに友人は、                    
 「お前は王子様か。」                       
と怒鳴った。                    
 「ただでやった女何人いる?」                   
と云う友人に、アベルは、                    
 「タダで?」                  
 「お前ら同志社やろっ、ただで?ただで済                   
まされるわけないやろ。ネックレスの一つで                    
も渡さなただで済まされるわけないやろ。」                    
 「お前らほんまに同志社か?」                   
 「ラブホに連れてっただけの女の方が、付                   
き合った数に入らん。精神的交流が大事。」                    
 「女が、私、アベルさんと付き合ってるの                  
って言いふらしてても、SEXしてなかったら、                      
付き合った事にならんのか。お前ら一体どう                    
いう物の考え方してんねん。」                    
 「物質主義、タダモノ主義。」                   
 「お前ら、女、ダッチワイフみたいに思っ                   
ってんのか。」                                 
   
ベースの金田が、         
 「アベル君は、ギャルバン、ぜらぁ、の高                                  
野さんを意識して、お母さんの名前で婦人服        
を買ってます。」                    
と、みんなの前で笑った。                    
 村野ゴゾは、アベルに、                   
 「掃き溜めに鶴」                   
とか、                    
 「アヒルの中の白鳥。」                   
と、アベルに喧嘩を売った。                    
 トモエに深夜3時に電話。                   
 「俺やけど。」                   
寝ぼけたトモエは、                    
 「アベルさん。なんですか、こんな時間に                   
。」                      
 大和八木駅で名古屋行きの特急に乗ろうと                   
すると、長髪で、ブラウスを着て、ギターを                    
持っているアベルを見て、                    
 「誰に喰わせてもらってると思ってんねん                   
。」                                   
   
と、知らないおばさん達が、怒鳴った。特急         
に乗ると、隣の席の女が席を立った。名古屋                    
に着く前、サラリーマンが、アベルに向かっ                        
て、                    
 「X JAPAN シンドローム」                   
と、笑った。                    
                    
 第3章 飛田新地                   
                    
 北海道からツアーに来たバンドの友人達と、                   
新世界で飲み、一緒に飛田新地に行った。ア                    
ベルはすぐに、或る女優に似た女の子を見つ                    
けて、店に入った。河田が値段の交渉をして                    
くれたが、アベルは足元を高くとられた。                    
 「30分、2万円。」                     
自分につけられた値段だと思った。女の子が、                    
シャワーから帰ってくると、アベルの立った                    
性器にスキンを着け、事に起こった。アベル                    
はうまくできなかった。暗闇で女の性器を覗                    
く。女は嫌がった。まだアベルは、女の性器                    
   
をちゃんと見た事がない。正常位でもバック         
でも駄目だった。アベルは女の乳頭を吸い、                    
自分で事を済ませた。                        
 店を出ると、北海道から来た友人達と自分                   
の仲間は、待っていた。アベルは良い友人達                    
だと思った。                    
 「アベル君、急にいなくなったから待って                   
たんだよ。」                    
飛田新地から、新世界までのデンジャラスな                    
通りを、仲間と一緒に帰った。                    
                    
 女は精神障害者だった。陥没した乳頭を舐                   
めて経たせた。おいしかった。性器は黒く、                    
グロテスクだった。その雑巾のようなものを                    
舐める自分は穢らわしかった。やはり立たな                      
かった。女はフェラチオを拒否し、アベルは、                    
ビデオで事を済ませた。                    
                    
 入院中、イタリア女のような顔をした女が、                   
大きな瞳を光らせて、アベルの病室に入って                    
   
きた。男を物色していた。アベルは、その女         
を自分の病床に、押し倒した。下着を脱がせ                    
ようとしたが、紐の脱がせ方が分らず、シュ                        
ミーズの胸の中に、指を入れ、乳頭を弄くっ                    
た。その乳頭は陥没していて、弄くるにつれ                    
経って来た。その隆起した乳頭は、長く、細                    
く、弄ぶにはちょうどだった。アベルは自分                    
で事を起こそうとしたが、薬で虚勢されてい                    
て、中途で事は終わった。                    
                    
 天理教の養木の資格を取った、40歳前の男                   
女のお見合い会のようなものに、着物を着た                    
女が、和服の胸の中に、指を入れ、また着物                    
から、入れた指を戻した。アベルの長髪を、                    
X JAPANだの、山下達郎だの囃し立てられた                      
アベルと目が合った婦人は、洋美に似ていた。                    
                    
 アベル達、バンド仲間は、男女同じ部屋で                   
ざこ寝しても、性交パーティをやるようなグ                    
ループではなかった。バンド仲間は、男女と                    
   
もに、お互いを尊重し、決して性的な目的で         
仲間が集まる事はなかった。                    
                        
 第4章 マリエ                   
                    
 マリエはライヴ会場で、出番を待っている                   
アベルの肩に、網目タイツに身をくるめた脚                    
を掛けた。マリエはそのままバーボンを飲み                    
続けていた。                    
 「これ、触っていいの?」                   
 「あかん。」                   
 「マリエ、お前、お母さんの若い時にそっ                   
くりやから、こんなん見ても欲情せんのやっ                    
。」                    
マリエはそのまま、網目タイツの脚を、アベ                      
ルの肩に掛けたままバーボンを飲んでいた。                    
                    
 第5章 マリエとのデート                   
                    
 古着屋の共同経営者であるマリエの古着屋                  
   
で待ち合わせした。マリエは共同経営者であ         
る理恵に、どのドレスがいいか、選んでもら                    
っていた。着替え室からマリエが出て来た。                        
今夜は、アベルと二人でDJショウをやる。マ                    
リエが、JR難波駅に車を停めると、ビル、ウ゛                    
ィ二、ブライアンの3人の外国人が、TAXIに                    
乗ってくる。                    
 「おいっ、今日は俺とのデートのはずじゃ                   
なかったのか。」                    
クラヴ「サブタレニアンズ」で、マリエは、                    
三人の外国人に取り巻かれ、三人の間を飛び                    
跳ねるように、踊った。アベルはその時、マ                    
リエをトイレに連れ込み、後ろからレイプし                    
ようか、と思った。でも、やはりそんな邪心                    
はすぐに消した。                      
 マリエとアベルが、無事DJセッションを終                   
えた朝、大勢の連れの前で、アベルはマリエ                    
を堂々と、TAXIにエスコートし、天王寺まで                    
帰った。                    
 「アベルさん。また遊ぼう。」                      
   
「もうお前とは遊ばん。」         
                    
 第6章 マリエの母                      
                    
 「アベルさん。私のお母さんに若い時、立                  
命館大学で何があったのか教えて。」                    
マリエは、電話をよくかけてきた。                    
 「知らん方が良い事もある。」                   
マリエの母は、立命館大学の学園闘争に巻き                    
込まれ、一時、精神をおかしくし、小豆島に                    
嫁に出、大勢の子供を産んだが、家事を一切                    
せず、夜中に琴を弾く毎日を送っていた。                    
 「子供産み過ぎてん。」                   
と、マリエは父と、妹弟の弁当を作る日々を                    
語った。                      
                    
 第7章 客席で股を拡げる女                   
                    
 バンドPRISONER NO.6のLIVEは、小さいホ                   
ールをいつも満席にしていた。バンド活動は                   
   
順調だった。そんなLIVEの或る日、アベルの         
弾くギターの方に向かって、客席の女が、股                    
を拡げた。アベルに向かって、スカートの中                        
の、白い下着を顕わにしたその女は、アベル                    
のファズギターが最高潮に達しようとする時、                    
下着を脱ぎ、アベルに自分の股間を見せた。                    
それは、暗い客席を舞台の照明の中から見る                    
と、大きな渦巻きであるかのように見えた。                    
アベルは、                    
 「何じゃコレ。」                   
と思いながら、ギターを弾いた。                    
                    
 第8章 芸大講師 ユリカ                   
                    
 GONGのLIVEで、或る美しい女から、                     
 「アベルさん、今夜は帰さないわよ。」                   
と、話しかけられた。聖加の先生で、今年、                    
大阪芸術大学に、講師として招かれた、柴野                    
ユリカだった。アベルは金田に、                    
 「金田さん、ラヴホテルって一泊いくらす                   
   
んの?お金貸してくれへん?」         
 「そんなにせえへんはずやで。」                   
GONGのLIVEが終わると、ユリカとアベルは一                        
緒にワインを飲んだ。ユリカの、ジッパーを                    
もし降ろしたら、胸からスカートまで一気に                    
脱がせられる、黒のワンピース姿を前にして、                    
アベルは、                    
 「今夜、ユリカさんの部屋に泊めて下さい                   
。」                    
と、頼んだ。アベルはその場で、ユリカを押                    
し倒したいくらいの欲情を抑えるのに必死だ                    
った。                    
 「旦那がいるの。きっとびっくりするわよ                   
。」                    
アベルはTAXIを拾って、帰った。                      
 「まるでシンデレラボーイね。」                   
ユリカの黒い直毛の長髪に見送られ、心斎橋                    
を後にした。                    
   
第9章 聖加とのデート         
                    
 能田雄二の岡山遊会のチューターを、一晩                      
かけて行ったアベルの部屋に、正午フォーン                    
が鳴った。能田の娘、聖加だった。                    
 「今日は、アベルさんとデートしなさいっ                   
て、お父さんが。」                    
まだ高校三年生の、18歳の可愛い女の子のデ                    
ートの申し出を断るわけにはいかない。岡山                    
の陽射しは明るい。多少眠かったが、聖加と                    
市電に乗り、後楽園に行った。聖加は入場券                    
売り場のバイトをしていた。                    
 「あらっ、今日はデート?」                   
職場の同僚のおばさんに、聖加は、恥ずかし                    
く笑った。そういえば、男子校に通っていた                      
アベルは、同じ歳の女子高生と遊んだ事がな                    
かった。植物園をぐるぐる廻った。岡山城は、                    
改装中だった。                    
                    
 岡山ペパーハウスの遊会に、毎月アベルは                  
   
出席した。そしてその都度、聖加とアベルは         
岡山の街を廻った。倉敷美術館で、聖加の膝                    
枕で寝た。岡山駅で、新幹線の窓から手を振                        
って帰った。                    
 聖加は2晩、ゴールデンウィークに遊びに                   
来た。聖加の母、真子から、                   
 「家の聖加は大勢の人のお世話になっても                   
らおうと思ってるの、よろしくお願い。」                    
と、頼まれた。                    
 キス一つせず、アベルは母屋で寝て、聖加                   
を自分の部屋で一人で寝かせた。大阪の街で、                    
18歳の少女と、30歳代前半の長髪の青年の                    
カップルは奇異に見え、すぐに噂話になり、                    
聖加はユリカのイヴェントに出かける途中、                    
自分達の噂話をしている、客と電車に乗り合                      
わせた。                    
 大きなリュックサックを提げた聖加は、岡                   
山と同じように、赤信号の道路を渡ろうとし                    
た。                   
 「駄目だって。無灯火で走ってる車だって                    
   
あるんだから。」         
アベルは、聖加のリュックサックを持って、                    
止めた。                        
 聖加とアベルは、ちゃんこ鍋をつついた。                   
聖加は、アベルに食事作法を一つ一つ細かく                    
注意した。                    
 真子はお礼にと、ペパーハウスでアベルに                   
麻婆豆腐を作ってくれた。                    
                    
 第10章 由美                   
                    
 ペパーハウスのLIVEの後、客席でビールを                   
飲んでいたアベルは、隣りの女に席を譲った。                    
 「あなた、さっきギター弾いてた人でしょ                   
う?すごかったです。ぜひ住所教えてくださ                      
い。ファンレター書きます。」                    
由美という、その女は、大勢いる文通友達の                    
一人になった。たまにTELで話す事もあった。                    
女性の文通友達は、アベルのLIVEサーキット                    
が成功するにつれ、増えて行き、アベルは丁                    
   
寧に返事を書いていった。         
 難波BEARSで、岡山からツアーに来て対バ                   
ンした熊野に、                        
 「由美ちゃんって知ってる?」                   
 「俺の彼女の一人。」                   
なんだ。岡山の女は、みんな熊野の手が付い                    
ている。                    
 由美からは、一緒にチボリ公園に行こう、                   
と手紙に書かれてあった。TELで、今度岡山                    
に行く予定を伝えたが、他の女との約束が入                    
って、由美とチボリ公園をデートする事はな                    
かった。                    
                    
 第11章 有野 瞳                   
                      
 大勢いる文通友達の中で、瞳という名の男                   
かも知れない人との文通が盛り上がった。筆                    
跡が男の筆跡で、いつもコピーされたものが、                    
送られてきた。瞳はアベルのファンだと言い、                    
世界中の有名アングラミュージシャンの中の                    
   
一人として、アベルを認め、音源を送って欲         
しいという文章が送られてきて、何度目かの                    
曲にOKサインが出されて、有野瞳が世界中か                        
らミュージシャンを集めたコンピレーション                    
カセットに、アベルの曲が収められた。アベ                    
ルはカセットのお礼にと、お気に入りのAV                    
女優達の美乳アダルトヴィデオ編集テープを                    
作り、瞳に送った。瞳からは、お礼にと、巨                    
根の男性が女性器と交わる編集ヴィデオテー                    
プが送られて来た。その時、アベルは、瞳が                    
女だと気付くべきだった。アベルは瞳に趣味                    
が悪いと、苦言を書き、瞳との文通は途絶え                    
た。                    
                    
 第12章 美佐子                     
                    
 ハードコアパンクのヴォーカリストとして、                   
絶叫する美佐子が、岡山ペパーハウスの楽屋                    
にOL姿で現れた。美佐子は建築会社でOLをや                    
りながら、バンドのヴォーカリストとして活動して
いた。美佐子とアベルは、西田とバンドを編成し、
そのバンドには聖加も加わった。                    
アベルのファズギターにトレモロエフェクト                        
がかかると、美佐子と聖加が絶叫する、そん                    
なLIVEだった。美佐子との文通も真面目なも                    
のだった。また美佐子の彼氏の気を悪くさせ                    
るような真似はアベルは決してしなかった。                    
ペパーハウスのLIVEの後、メガトロンという                    
ギャルバンのリーダーが、アベルの手を掴み、                    
自分の大きな胸にアベルの手を持って来て、                    
鷲掴みにして、揉みほぐさせた。美佐子は怒                    
り、歌詞だと言って、                    
 「あなたは許せません。」                   
と手紙に送って来た。美佐子との文通も32歳                    
の春に途絶えた。                      
                    
 第13章 楓                   
                    
 KOAの楓と最初に会ったのも、岡山ペパー                   
ハウスだった。楓と真理のKOAは、注目され    
ていた女性ハードコアバンドだった。真理が、         
アベルを用心深く見つめると、楓に、                    
 「どんな音楽好き?」                       
と尋ねた。                    
 「ストラヴィンスキーとか、、。」                   
楓はおおらかな女だった。ギャルバンの女の                    
子は、良い演奏をするバンドメンしか認めな                    
い。真理と楓とは、アベルの演奏の後、すぐ                    
に友達になって、お互いのLIVEの客になった。                    
冬、楓は手袋を脱いで、握手した。楓との文                    
通は長く続いた。楓の勤めている姫路のLIVE                    
HOUSEによくTELして、楓はいつも心良く電                    
話の相手をしてくれた。楓はアベルがいつも                    
本を送るお礼にと、スタンダールの『赤と黒                    
』をプレゼントしてくれた。マダムとの関係                      
を利用して、伸し上がる『赤と黒』の主人公                    
を、ペパーハウスのマダム真子の取り持ちで、                    
能田雄二に認められていくアベルの姿を、合                    
致させて、楓は見ていた。あいにくアベルは                   
そんな卑怯な男ではない。                         
  
 真理がクリスマス、彼氏と送る前の日、楓         
は、                    
 「明日、逢っていただけません?」                       
と、電話してきた。先約があった。トモエと                    
クリスマスを送る約束をしていたが、トモエ                    
の方を断ったら良かったのだ。律儀なアベル                    
は、                    
 「先約があるから。」                   
と、断った。アベルは女の扱いに慣れた男で                    
はない。誤解されていた。楓の家に電話して                    
も、楓の祖母はいつも心良く、繋いでくれた。                    
真理と楓は、アベルの誕生日に、ジョイナー                    
のマニキュアをプレゼントしてくれた。楓に                    
逢うために、姫路のLIVEHOUSEに、良くサー                    
キットした。                      
 アベルが倒れた年、楓はアベルの若い頃そ                   
っくりの男の子の彼氏ができ、そのまま結婚                    
した。アベルは、楓とは、プラトニックなま                    
ま終わって良かったと思っている。                    
   
第14章 真子         
                    
 ペパーハウスのママ真子は、アベルにとっ                       
て、メトレスのような存在だったのかも知れ                    
ない。或いは、芸術家が高邁な理想を築く為                    
の、精神的パトロンだったのかも知れない。                    
真子に頼まれなければ、聖加とアベルは関係                    
を持っていたかもしれない。真子の美しさは、                    
人を威圧するような優しさだった。能田夫妻                    
は、才能のある若いアーティストに優しい。                    
 「私。今、聖書の勉強してるの。」                   
 「雄二さんがね、ヘーゲルは、ゲーテの植                   
物生態論から弁証法を思いついたって。」                    
アベルは、                   
 「あれは、聖書の『一粒の麦死なずば』か                     
ら来てるんですよ。」                    
 「『一粒の麦もし死なずば麦にてあらん』                   
って、一粒の麦がもし麦のままだったら、一                    
粒の麦のままだけど、麦として一回死んだら、                    
麦の大穂になるっていう聖書の言葉の引用な                       
んですよ。」         
 「中世論理学は、それから弁証法を考え出                   
したんです。」                        
 「ゲーテがどんな教育を受けてたか、知ら                   
ないけど、多分、ヘーゲルみたいな中世論理                    
学の教育は受けてるはずですよ。」                    
 「アベル君は何でも知ってるのねえ。」                   
真子は呆れたように、美しい大きな目を輝か                    
せた。真子は、深夜にアベルが、電話をかけ                    
ても、いつも優しく電話の相手をしてくれた。                    
アベルが重要なアーティストとして、自分が                    
育てなければならないのが、アーティストの                    
ママとしての自分の仕事だと思っていた。聖                    
加と真子のために、アベルはカセット作品を                    
作っていった。聖加はアベルと喧嘩別れした                      
後、真子に全てのカセットテープを預けた。                    
真子はアベルのカセットテープを聴き続けた。                    
 「雄二さんは、こんな良いの聴かせてくれ                   
んかった。」                    
KING CRIMSONばかり、真子に聴かせていたら                      
しい雄二は、YESやI POOHなどを、真子に聴         
かせた事はなかった。大人の女というのは、                    
真子のような人間の出来た女の事なんだと思                        
う。クラシックバレエのレッスンを受け続け                    
ながら、ペパーハウスを経営し続ける真子に、                    
アベルはいつ、恩返しできるのだろうか。                    
                    
 第15章 向野 千恵                   
                    
 胡弓奏者、向野千恵のファンだったアベル                   
は、十三ファンダンゴで、大きな薔薇の花束                    
を渡した。向野千恵は電話越しに、呼吸法の                    
治療を、アベルにしてくれた。                    
 「あなた呼吸が乱れてるわよ。呼吸法を教                   
えてあげる。」                      
 「吸って」                   
 「吐いて」                   
 「大きく、ゆっくり。」                   
 「はい、吸って」                   
 「吐いて」                                
   
「もっとゆっくり。大きく。」         
                    
 向野千恵の顔は、何処かアベルに似ていた。                       
向野千恵とアベルが対バンした時には、アベ                    
ルに、                    
 「向野さんの弟さんですか?」                   
と、訊いてくるスタッフまでいた。アベルは、                    
向野さんがバイトする古書店に、よく通った。                    
アベルのピアノの多重録音テープをプレゼン                    
トした。ラジカセで鳴らすと、                    
 「ライヒみたい。」                   
と云われた。                    
 「私も髪長く伸ばしてたことあんのよ。」                   
 「スパゲッティ食べる時なんかバサッて感                   
じで。」                      
アベルは、向野千恵のLIVEのほとんどを追っ                    
かけ、観た。向野千恵が東京に引っ越す前の                    
晩、アベルは一時退院して帰宅した家から電                    
話した。アンデレ教会に寄って、十字架を架                    
けて、東京に行くように、と、わけのわから                      
ない電話をかけたアベルは、それ以後、向野         
千恵が大阪にLIVEしに来ても、観に行く事は、                    
なかった。                        
 久しぶりに、対バンした時の、向野千恵の                   
胡弓は、全く変わっていなかった。                    
                    
 第16章 Date with マキタ トモエ                   
                    
 紀伊国屋書店の洋書コーナーで待ち合わせ                   
して、阪急電車で京都の河原町まで出、京都                    
イタリア会館で、トモエとアベルは、                    
 「ボビーチャールストンの夏」                   
を観た。英語字幕を追いかけているトモエは、                    
眠ってしまった。寝顔が可愛かった。会館の                    
喫茶ラウンジで、一緒にカレーを食べた。な                      
んでもない普通の女の子とのデートが、アベ                    
ルには嬉しかった。I POOHの『パルシファル                    
』のCDをプレゼントして、トモエは高槻で降                    
りていった。                    
 何回かのデートの後、トモエとアベルはバ                    
ンドを組んだ。トモエのサイドギターとアベ         
ルのストラトキャスターのノイズトレモロ奏                    
法は、各地で評判が良かった。しかし、隣で                        
サイドギターを弾いているトモエと、アベル                    
の心の距離は、どんどん離れていくばかりだ                    
った。                    
 トモエとアベルのユニットバンドが活動を                   
停止した後、初めてスカート姿のトモエが、                    
アベルのLIVEに現れた。                    
 「一晩中、ゴアトランスで踊ってたんです、                   
アベルさん。お金下さい。」                    
白い、綺麗なトモエの脚を見たアベルは、思                    
わず、何千円かの紙幣を財布から、トモエに                    
あげた。                    
                      
 一時退院した日、TVに変な事が起こった。                   
観る番組、観る番組、全て途中でブチっと切                    
れ、チャンネルを変えていないのに、番組が                    
変わった。そのうち、                    
 「恋の馬鹿騒ぎ」                                
のシーンに変わった。すると、マキタトモエ         
が、女の子達が座る席の後方に居てた。トモ                    
エは紹介されるとすぐ、ディレクターに飛び                        
ついて、                    
 「こんな人がタイプなの。」                   
と、ディレクターとスタジオの外に出て行っ                    
た。                    
 
 マキタトモエは、『恋の馬鹿騒ぎ』になん                   
か出てない、と言い張る。あれは、幻覚だっ                    
たのだろうか?。                    
                    
 第17章 利江子                   
                    
 利江子は、明らかに、異母妹だった。アベ                   
ルは利江子の前では兄でしかなかった。兄の                      
ように振る舞い、そして実の兄だった。                    
 美加と別れた後、美加と行くはずだった、                   
エアロスミスのコンサートをキャンセルし、                    
利江子とイタリア料理店で、食事した。                    
 美加は皿を持って食べ、利江子は皿に頭を                   
近づける。アベルの会う女は、そんな女 ばか         
りだ。亡くなった母は、                    
 「あんたがこんな男やからや。まともな男                       
やないから、まともな女に会われへんねん。」                    
と、云われた。                    
 利江子と伊勢でデートした時も、何も盛り                   
上がらなかった。鳥羽水族館で、一緒にポテ                    
トチップスを食べても、寒いだけで、まるで                    
恋人同士のようにはならなかった。兄妹のデ                    
ートが、そんなに盛り上がるわけがない。利                    
江子が横に居るというのに、アベルは、美加                    
のハンドネックレスを買った。                    
 利江子はアベルに悉く反抗した。アベルが、                   
 「会いたい」                   
と云うと、尼寺に駆け込んだりした。伊勢の                      
デートが終わって、駅で利江子は泣いて別れ                    
た。                    
 「また、いつでも会えるやんか?」                   
 「なんで泣くねん。」                   
それでも、利江子は泣き止まなかった。                    
   
 泣いたまま、八木に向かった近鉄特急を、         
利江子は見送った。                    
                        
                    
 第5部                   
 美加                   
                    
 第1章 美加                   
                    
 「Many guys have come to you.La La La La                   
La LaLa Love me, I love you.」                    
ラヴホテルで不発に終わったアベルを、から                    
かうように、美加は熟した太腿を、アベルに                    
見せびらかした。その太腿は、黒いストッキ                    
ングが、はちきれんばかりで、その美加の太                      
腿に、アベルは、今すぐにでも、かぶりつき                    
たいと思った。でも、美加は、ラヴホテルに                    
引き返す金が、今日のアベルにはないのが、                    
分っていた。それでも誘惑する美加は、意地                    
悪だ、とアベルは思った。                              
  
 第2章 小乗行脚         
                    
 第1楽章 白い刀                       
                    
 アベルがまだ、二、三歳の頃、叔父茂が鞘                   
を構え、アベルの刀という白い持ち手の、大                    
きな、白光を放つ美しい刀を、鞘に入れる儀                    
式を、小二、三時間行った事がある。その時                    
の庭には角立て四つ目の家紋の幕が張られ、                    
それが何らかの儀式であるのは明白だった。                    
 アベルは幼過ぎて、その美しい刀がお前の                   
ものだと言われても、それがさも当然の如く                    
思え、その白光を放つ刀の所有者が自分であ                    
る事の重大性など解る由もなかった。                    
 銃刀法のある今日、そのような刀は、本人                     
の解らぬ寺に、預けるのが習わしである。ア                    
ベルの弟が小学生の時、突然、                    
 「お兄ちゃんの刀見た。美しい刀やった。」                   
と言い出した事がある。アベルはその寺の名                    
前を聴きだす事はしなかった。憶えてはなら                      
ない寺の名前だったのだろう。         
                    
 第2楽章 博嗣                       
                    
 アベルが生まれた家は、大きな農家で、父                   
の末の弟二人の同居する、祖母と父母、弟二                    
人の大家族だった。母が嫁いだ時は、父の姉、                    
妹、弟四人が同居していた。父は、姉、妹、                    
弟達を、亡くなった祖父の代わりに育て、一                    
人一人片付けていった。父の姉は嫁ぐ時、戸                    
籍には、士族ハツノと書かれてあった。そう                    
いう士族や華族という身分は、昭和四十年代                    
からは戸籍に使われなくなった。                    
 貧しい経済と、封建的身分制度の名残のギ                   
ャップに独り苦しんでいたのが、父であった。                      
母は、東大阪の、その頃若き母のような女の                    
子には当然の職業だった、家政婦だった。母                    
の勤める電器屋の物干し台から、近所の高校                    
のラグビー部の練習場が見え、母は、ラグビ                    
ー部のアイドルだった。当時の東大阪の空は、                       
スモッグで淀んでおり、母は高取城下町の材         
木問屋の家政婦に移った。母はそのまま普通                    
の家庭の主婦になれたのである。それを、父                        
が騙し、連れ帰った。母に待っていたのは、                    
給料の払われない女中奉公だった。                    
 上の弟、義孝と義弘は、すぐに独立した。                   
ハツノと敏子は嫁に出た。義孝は放蕩もの、                    
義弘は真面目だが、質が悪かった。ハツノは、                    
気丈夫だけが取り柄で。吉野の農家でこき使                    
われ、後に片足を不自由にした。敏子はパー                    
マをかけた髪を工場のベルトに引っかけ重傷                    
を負い、見舞いに来た工場長と結婚したが、                    
その男は、父から登記簿を盗み、株を買う担                    
保にしようとした。敏子は流産し、離縁させ                    
られ、兵庫の旅館で住み込み女中奉公をして                      
いた。                    
 母はいきなり、高校生の茂と、中学生の博                   
嗣の母親代わりになった。茂は工業高校生だ                    
った。アベルは小さい頃、茂の解く物理の問                    
題を一緒に解いていった。茂が万年筆で英語                       
の予習をしていたのも一緒に見ていた。博嗣         
は、中学校を出た後高校には行かなかった。                    
 職業訓練校を経て、松下電器に勤めるも、                       
悪い女に引っ掛かり、松下電器を辞め、ダイ                    
エーに再就職した。その女は創価学会員で、                    
博嗣は二階の実家の茂と共同の部屋に仏壇を                    
置いた。                    
 ドラムセットを叩き、卑猥な歌謡曲のレコ                   
ードをステレオで鳴らす、博嗣は、子供がい                    
る前で、平気で『プレイガール』にチャンネ                    
ルを合わせ、『ゲバゲバ90分』を観た。深夜                    
は『11PM』を観ていた。TVの下の本棚には                    
いつも、『平凡パンチ』や、『プレイボーイ』                    
が置いてあった。アルサロの帰りに、終電が                    
終われば、歩いて南大阪線を帰ってくるよう                      
な男だった。スポーツマンであるのだけが、                    
彼の取り柄で、ダイエーではバレーボールや、                    
野球の選手だった。                    
 さて、アベルが九歳の時、父は博嗣に創価                   
学会員の女と本気で別れさせようとした。し                      
かし、女の家から提示された慰謝料は多額だ         
った。博嗣は給料から一銭も家に生活費を入                    
れず、全て使ってしまう男だ。そんな金の出                        
せるわけもなく、父に泣きついた。別れさせ                    
ようとしているのは父だ。しかし父にもそん                    
な金はない。祖父が取り返した千坪の土地は、                    
意地でも売れない。                    
 父がその相談を、布施の伯父夫妻に持ち込                   
んだ。布施の伯父夫妻は祖母の妹夫婦である。                    
伯父夫妻は快く引き受けた。そして、その夏、                    
アベルを一人で布施に来させなさいとだけ、                    
父に言った。                    
 アベルは、布施の伯父夫妻のもとで一週間                   
過ごした。銭湯の女湯で女達に暴行され、初                    
精通を若い女の中で出した翌日、その女は、                      
妊娠したかも知れないと、伯父家を訪問した。
その若い女は、九歳のアベルに算数をやらせ                    
たり、九九はできるのね、とか、当然か、や                    
っぱり堕胎しようかしら?とか、ヘブライ語                    
のようなものを書くヨゼフに、やっぱり才能                      
あるのかしら?とか、妊娠した子供を堕胎し         
ようかどうか迷っていた。                    
 せっかく戴いた子種だからと、あきらめた                       
様子で帰って行った。その女は既婚で、その                    
若い夫婦には、子宝がなかった。                    
 その翌年、アベルが小学校から帰ってくる                   
と、赤ん坊が衣にくるまっていた。赤ん坊は                    
泣きもせず、アベルを見て笑っていた。叔父                    
に                    
 「おっちゃんの子供?」                   
と聞くと、                    
 「お前のや。」                   
と答えられた。アベルが赤ん坊を見ていたの                    
は、数分間か一時間だったかわからない。赤                    
ん坊は泣きもせず、おしっこもせず、ただア                      
ベルを見て笑っていた。                    
 赤ん坊はアベルが小学校から帰ってくる時                   
間を見計らって広間に置かれ、そしてすぐ連                    
れて帰ったのだろう。アベルとの面会は一瞬                    
間だけだった。                                  
   
アベルに親権はない。その前の夏、布施で         
行った事は、叔父博嗣が女と別れるために払                    
う慰謝料を捻出するために仕組まれた事だっ                        
たのだ。                    
                    
 第3楽章 祖母のヘブライ語                   
                    
 アベルが九歳の秋、祖母が死んだ。祖父と                   
祖母の間に出来た七人の子供のうち(一人は                    
子供の頃死んだ)インテリは一人もいない。                    
祖父は読書家だったが、祖父の子供に本を読                    
む習慣のあるものは、一人もいない。祖母が                    
古いしきたりばかり重んじる宗教家だったせ                    
いかもしれない。                    
 天理教の分教会の娘だった祖母は、琴を嫁                     
入り道具に持ってきたが、借金のかたに取ら                    
れた。浄土宗の寺でのボランティアが認めら                    
れ院号を受けた。しかし、本当の祖母の姿は、                    
籐椅子に座って、街の山高い丘にぽつんと建                    
つ、ユダヤ尼僧教会の尼僧達とヘブライ語で                       
会話するマザーが、トミノの正体だった。ト         
ミノはユダヤ人とのハーフで、ヘブライ語の                    
手ほどきを受けた、ユダヤ教の尼僧だった。                        
それが祖母の本当の姿だった。                    
 祖母はアベルが歩けるようになった時、様                   
々な神社仏閣にアベルを連れて行った。そし                    
てアベルが売られた年の秋、死んだ。                    
 その魂は、大きな火の玉となって、天に召                   
された。                    
                    
 第4楽章 茂                   
                    
 茂は博嗣と違い真面目だった。アベルの知                   
能は、茂の勉学を一緒に見て育ち、発達して                    
いった。茂は博嗣と一緒に『プレイガール』                      
や『ゲバゲバ90分』を観ていたが、もし、博                    
嗣がチャンネルを回さなければ、敢えて子供                    
のいる前で、そんなTV番組は観なかったろう、                    
と思われる。                    
 茂は救世教に入っていた。ワンダーフォー                     
ゲルが趣味の電電公社員らしい、社会党員だ         
った。そんな真面目な茂にも縁談が舞い込み、                    
話しはトントン拍子に進んだ。吉野の或る資                       
産家の家への養子縁組だった。そのお姉さん                    
は綺麗な人で、同居している甥のアベル達の                    
ためにクリスマスケーキを持参する念の入れ                    
ようだった。                    
 茂の結納式に、何故か結納品だけが送られ                   
てきた。茂はカメラでそれを撮っていた。                                    
  「記念に。」  
と。                    
 父は茂が養子に取られるのを嫌い。わざと                   
宗教道場で、道場主の口から、祖父の声で、                    
茂に、                    
 「家に、養子にやる男子は一人もおらん。」                     
と言わせた。その事があった後、茂の縁談は                    
こじれ破談になった。茂に支払われた結納金                    
を返しても、まだ多額の慰謝料が請求された。                    
父は再び布施の伯父夫妻を訪ねた。伯父夫妻                    
はまたアベルを一人で送るよう告げた。                   
   
秋の布施で去年と同じ事が、別の女と起こ         
った。布施の伯父は、去年と同じ催眠術をか                    
け、その二つの催眠術は、初めの子が宿った                        
時から三十年間解けなかった。伯父はタイマ                    
ーのようなものを催眠術にかけていた。                    
 その年、布施の伯母が死に、伯父はアベル                   
が大阪のミッションスクールに入学した時、                    
 「真実を言う。」                   
と、言ったままガス自殺した。アベルが布施                    
に行こうとするのを邪魔する、美大進学希望                    
生のせいで、伯父の家に着いた時には、鍵が                    
かけられ、中からガスの臭いがした。近所の                    
人に訴えると、                    
 「好きにさせてやりな。」                   
としか、言われなかった。                     
 因みに、その美大進学希望生は、一浪の末、                   
武蔵野美術大に進学し、AV男優になり、広                    
告代理店に就職したが、コンクリート詰めで、                    
港に沈んだ。                    
   
第3章 25歳のソープランド         
                    
 アベルは、もはやその女の胸を触って、弄                       
んでいる余裕がなかった。ピルを飲んでいる                    
という、この女のHOLEに、ありったけの精液                    
をぶちまける事しか考えてなかった。事実、                    
女は、両脚でアベルの身体を巻いて囲んで、                    
事を最期まで済まさなければ、その巻かれた                    
両脚が、アベルを開放する事はなかった。ア                    
ベルは女の太腿の感触を感じながら、ひたす                    
ら腰を、女のHOLEにめがけてグラインドさせ                    
た。アベルのイチモツは、女の子宮に何度も                    
当たり、その都度、女は猥褻な喘ぎ声を大声                    
であげていた。アベルのグラインドはだんだ                    
ん早くなり、アベルも何かわけがわからなく                      
なっていくと、女はほとんど半狂乱のような、                    
大きな喘ぎ声を出していった。子宮に当たり、                    
膣の壁を出し入れする亀頭は、アベルには痛                    
かった。快楽の快感と、痛みが同時に起こる。                    
女は半狂乱で、喘ぎ声を上げながら、アベル                       
のグラインドは、頂点に達していった。もは         
やお互いわけのわからないその頂点の瞬間、                    
アベルは子宮に当たったペニスから、大量の                        
濃い精液を発射し、女の胸を掴んだ。女はま                    
た喘ぎ声を上げる。そしてもう一回グライン                    
ドさせて、女は喘ぐ。すると、アベルを囲ん                    
だ女の両脚が開き、アベルはようやく包まれ                    
た女の両脚から開放された。                    
                    
 第4章 美加の母 真由子                   
                    
 真由子は、                   
 「あの時、500万円も払ったじゃないの。                   
大学くらい行かせられたでしょ?自分の商売                    
の穴埋めに使ったのかしら?」                      
 「叔父さんの慰謝料に。」                   
と、アベルが答えると、                    
 「そんなもんにあんな大事なお金使われた                   
らたまったもんじゃないわよ。」                    
と、真由子は怒った。                            
   
しかし、アベルと真由子は、一体、何時、         
何処での話しを、二人が話し合っているのか。                    
美加の子供の時の写真集を見て、真由子の前                        
で幼稚園児のように振る舞っている美加を前                    
にして、一緒に美加を作った相手かもしれな                    
い真由子との間に、アベルは、タイムマシン                    
を行ったり来たり、グルグル時間を廻るSF空                    
間を、その千里山の邸の二階のテラスで憶え                    
た。                    
                    
 第5章 リッツカールトン28F                   
                    
 リッツカールトン28Fのセミスイートで、                   
アベルは、まるで果実を頬張るように、ドレ                    
スからまさぐり、美加の乳房をドレスからは                      
み出させ、乳房を揉みしだきながら、乳房か                    
ら乳頭まで、その果実を貪った。片方の乳房                    
を口で頬張り続け、片方の乳房は、手で揉み                    
くだし、乳頭を弄くり廻し、右手で美加の膣                    
をSearchingしていった。アベルが右手の第一                   
   
関節を揺らす度に、美加はLoveジュースを出         
していった。アベルは、その美加の膣への、                    
指の愛撫を辞めなかった。延々とそれは続い                        
た。美加の乳房はおいしかった。この世のど                    
んな果実より美味しい果実だった。美加のあ                    
げる声は、アベルをますます果実喰いに夢中                    
にさせた。                    
 夜から朝。梅田のど真ん中だというのに、                   
部屋は静かだった。28Fから見おろす客室か                    
らは、美しい街の風景が、夜景から朝の風景                    
に変わって行く。ソファーに座り、ただ美加                    
の膣を愛撫するだけで、SEXに至らなかった                    
このセミスイートの夜を、早朝に変わって行                    
く、大阪の朝の風景へと戻っていき、アベル                    
は現実へと、帰っていった。                      
                    
 第6章 孝江                   
                    
 9歳の布施の銭湯で、真由子は、                   
 「アポロンみたい。」                          
   
と、巻き髪のアベルを犯した。まるで、弓の         
矢が真由子の膣を指したようだった。アベル                    
の心臓はドッキンドッキンと鼓動し、心臓と                        
ともに、ペニスは指し続け、真由子の中に、                    
初精通を出した。美加は、だからアベルの子                    
なのだ。だから美加と性交には至らない。自                    
分の娘の膣の中に、自分の性器を入れる事は                    
できないのだ。                    
 10歳の時にも、布施の銭湯で、アベルは犯                   
され、その時も、女の子ができた。                    
 美加は孝江という女の子を、アベルに紹介                   
した。二人の娘と共に、大阪をデートした。                    
孝江は、
 「死んだはずのお父さんがミュージシャン
として生きていてくれて嬉しい。」
と言った。
 孝江と美加の父親にしては、アベルは若過                    
ぎた。まだアベルは、40歳にも達してなかっ                    
た。誰がどう見ても、孝江とアベルが並んで                      
歩いているのを、カップルとしか見ない。実                      
の親子だと言っても、誰も信じようとはしな         
かった。                    
 第一子と第二子との面会は果たした。ただ、                       
まだ30歳代のアベルに、二人に金を工面して                    
やる裁量がなかった。                    
 二人とは、もう一度別れた。                   
                    
 第7章 殺されたJOHN MATTHEW                   
                    
 孝江から、アベルが死んだ事になっている                   
のを聞いたのは、                    
 「実の父親は自殺した。」                   
と、訊かされている、との事だった。                    
 アベルは、JOHN MATTHEWというペンネー                   
ムで、アニメーションの原作に子供の頃、関                      
わっていて、アベルが自殺未遂した時、JOHN                    
MATTHEWは死亡した、と、公には伝えられ、                    
ジョンマシューのファンの手で、葬式が行わ                    
れていた。しかし、アベルのバンド活動が軌                    
道に乗るに連れ、実はJOHN MATTHEWは、生                                          
きてバンドを演っているという噂が広まり、         
その都度、アベルは精神病院に収監され、や                    
はり、JOHN MATTHEWは、死亡している、と、                        
その都度、公に伝えられた。                    
                    
 第8章 大金を持って顕われた女                   
                    
 天王寺の阿倍野橋駅からの特急席に、東京                   
の水商売系の女が、乗って来て、前の席に座                    
った。座る時、その女はアベルを睨んだ。美                    
加にそっくりだった。美加が若返って自分の                    
前に顕われたのかと思えた。                    
 その女は、SPのような男を何人も連れてい                   
た。そして、後ろの席のアベルの方を、何度                    
も振り返り、アベルに見えるように、おもむ                      
ろに、バッグの中身を隠したネッカチーフを、                    
ズラした。札束が積み上げられてあった。バ                    
ッグの底からその札束が積み上げられてある。                    
軽く、一千万円はあるだろう。女は突然、                    
 「あんたの金やっ!」                          
   
と、アベルに向かって大声で叫んだ。         
アベルはとっさに。                    
 「君、取っときなさい。」                       
と、頭の中で応えた。それは女に聴こえてい                    
た。アベルは声には出さなかったのに、その                    
女だけではなく、女のSP達全員に、そのアベ                    
ルの頭の中でだけ鳴った声が、聴こえていた。                    
 その女は女優だった。そして、亡くなった                   
母が、若かりし日のモデル時代に、撮影した                    
グラビアを、その女優はリメイクした。人々                    
は、若かりし日の母と、その女優があまりに                    
も似ているので、その女優は、アベルの子供                    
ではないか?と噂した。もし25歳の時に、子                    
供ができていれば、第三子がいるかもしれな                    
い。アベルは今年、43歳だ。その女優の公表                      
年齢は今年、23歳だ。アベルは、学生時代、                    
女性といっさい交渉を持っていない。年齢の                    
計算が合わない。25歳の時、子供が出来てい                    
れば、今年18歳のはずだ。                    
   
第9章 横領者達         
                    
 アベルが、JOHN MATTHEWとして、書いた                       
漫画の著作権料を、大木という公文塾経営者                    
から、仲介すると言って、横領され続けてい                    
った。横領は大木だけではなく、Villageの教                    
育関係者たちからも、合計、約七億円横領さ                    
れ続けた。そして、その横領が行われる度に、                    
アベルは人権を侵害され、殺されかけ続けた。                    
アベルの就労は妨害され続け、取るに足らな                    
い女性関係が、さも大犯罪かのように、宗教                    
関係者達が、吹聴して廻った。                    
 2000年代に入り、アベルに著作権料が、一                   
銭も渡されていない事が分ると、横領者達は、                    
アベルの著作権料を横領できなくなった。そ                      
れでも、他人の金で覚えた贅沢な暮らしは、                    
変えられず、横領者達は、2008年に全て、                    
自己破産した、                    
                    
 「ええシュミーズ履きやがって。これも、                    
ジョーペリーちゃんのお金で買ってんやろっ         
。」                    
カーシャとマリエンヌ達は、大木を玉葱状に                        
スカートを捲し上げて、帚や定規で、大木を                    
殴った。カーシャには、アベルの事を、アベ                    
ルの尊敬するエアロスミスのギタリスト、ジ                    
ョーペリー、と呼ばせていた。カーシャの母                    
親が再婚する前の、旧姓はアベルと同じ姓だ                    
った。カーシャは、死んでしまった自分の父                    
親の代わりに、アベルを自分のものにしたか                    
かった。
 「大木の母親に取られた金を返してもらっ                   
たら、高校生同棲生活もできる。」                    
カーシャは、大木に、アベルの金を返せ、と                    
迫った。                    
 アベルが、カーシャとマリエンヌ達を止め                     
ると、                    
 「今は止めたるけどな、俺が大人になった                   
ら、必ずお前の母親とお前を訴えたるからな                    
。今のうちに、俺の金で海外旅行でもしとけ、                 
お前の後半生は生き地獄やからな。」
 大木の母は、アベルのJOHN MATTHEWとし         
ての著作権料を仲介すると言って、たった百                    
万円だけ、アベルの指示したユニセフに寄附                        
し、後の九千九百万円を騙し取っていた。そ                    
の後も、大木の母親は、アベルの事を、娘の                    
彼氏だと騙って、著作権料を横領し続けた。                    
大木は、父親の転勤で、山口県の高校に進学                    
した。                    
 「あんな奴、いなくなると思ったらスッと                   
するわ。」                    
 「何度、縛り上げて、天井から吊るして、                   
蝋燭垂らしたろって思った事か。」                    
 「まあ若い時に、そんな罪作らん方がええ                   
わなあ。」                    
 「俺の専属売春婦になっても、文句言われ                     
んぐらい、金取られてんねんからな。」                    
                    
                    
   
第6部         
 The People of Japanese Zdbac around ア                   
 ベル                       
                    
 第1章 アベル                   
                    
 旧約聖書に出てくる、カインとアベルの話                   
で有名な、アベルは、BC13世紀に、プレイア                    
デス星から地球に来た、プレイアデス人だっ                    
た。アベルの直系の子孫は、いつしかヨーロ                    
ッパの中で、地位を築いていき、ハプスブル                    
グ家に代々仕える公爵、Zdbac家になった。                    
1900年頃、ハプスブルグ家に対する風当たり                    
は強くなった。1910年、Zdbac公爵は、自ら、                    
十字架に架けられる、ショウを演じ。1911年、                      
Zdbacの一族は世界中に、離散した。その後、                    
ハプスブルグ家の皇太子は暗殺され、第一次                    
世界大戦がヨーロッパに起こった。                    
                    
 第2章 ユバル                               
   
同じく、旧約聖書に出てくるカインの直         
系の子孫に、琴の名手、ユバルが記されてい                     
る。ユバルは琴などの楽器の名手、時には、                        
弓矢の射手として、メソポタミアからヨーロ                    
ッパ、東欧、シルクロードを経て中国に渡り、                    
時は老荘思想家の百家争鳴時代、ユバルは、                    
百家争鳴の思想家の一派になった。その後、                    
ユバル家は、朝鮮半島に渡り、新羅の花郎(                    
ファンラン)と呼ばれる種族に入った。花郎                    
は、貴族の芸術家集団であり、かつ戦いの指                    
揮官の集まりであった。モンゴルの侵略に敗                    
れた後、ユバル家は、鎌倉時代の飛鳥の地に                    
逃れ、阿部豪族の傭兵として、日本に帰化し                    
た。ユバル家は、そのまま戦国時代に、武士                    
になっていった。飛鳥、高取の地は、江戸時                      
代中期まで、越智一族が自治権を持っていた。                    
江戸時代中期、江戸幕府の本多家が、越智を                    
攻め滅ぼした時、ユバル家は本多家に付き、                    
高取城で、外様大名のような、No.2の地位を                    
得た。高取城城下町には、様々な日本各地の                      
地名があるが、ユバル家の領地には、ホーラ         
ンドという地名が残されている。おそらく、                    
高取城に来る、オランダ人の居留区があった                        
ように思われる。ホーランドの山には、礼拝                    
堂があった。ユバル家の歴史は決して平坦な                    
ものではなかった。婚姻する、南朝貴族の女                    
は、次々と、男子を毒殺していった。姫君に                    
一目惚れされ、切腹を命ぜられる男子も、ユ                    
バル家にはいた。                    
 江戸時代後期、ユバル家に、宗治(しゅう                   
じ)という、天才少年漢文学者が、現れた。                    
宗治は、先祖代々の漢文の蔵書を読み散らす                    
一方、自作の漢文詩を書き、またオランダ人                    
から、オランダ語、ドイツ語、フランス語の                    
手ほどきを受け、ドイツ文学やフランス文学                      
を読み漁り、17歳で、肺結核のため夭折する                    
まで、数々の自作の書き物を残し、宗治の物                    
語は、伝説になった。                    
 ユバル家は広い屋敷を持ち、広い屋敷には、                   
親類や兄弟などの家が立ち並んでいた。その      
中で、江戸時代後期、ユバルの分家が出来た。         
角立て四つ目の紋章の、このユバルの分家は、                    
城のNo.6の地位を与えられた。幕末、高取城                        
は燃え、後は石垣だけが、残された。                    
 もはや、切り捨て御免の世の中ではなくな                   
った明治初頭、ユバル家の当主は、六人の村                    
人を殺傷し、ユバル家は解体された。広い屋                    
敷は分割され、屋敷があったど真ん中に、道                    
が開いた。六つの地蔵が、村の墓に並び、ユ                    
バル家は小さな娼家になった。分家のユバル                    
家は、明治政府の恩賞金で、京都に商売に出、                    
ルーマニア人のユダヤ系の芸者を妻として連                    
れ帰った。分家のユバル家は、そのまま芸者                    
の置屋になり、本家の娼家で、三味線や琴を                    
弾いていた。分家のユバルの息子、宗太(そ                      
うだ)は、東北の旧制高校在学中、化学者と                    
して、ソーダ水を発明したが、アメリカで特                    
許が下りた時には、既に太平洋戦争が勃発さ                    
れており、特許料を、宗太が手にする事はな                    
かった。宗太は、1911年に高知の浜辺に漂                     
着した、Zdbac家の娘の一人が、丹波市に売         
られて来たアフリカ人と、結婚して出来た、                    
brownのユダヤ人、トミノと1930年代に結                        
婚していた。                    
                    
 第3章 Zdbac 椎野                   
                    
 1911年に、高知の浜辺に漂着した、Zdbac                   
一族は、そのまま四国から関西へ散らばって                    
いった。もはやヨーロッパを捨てたZdbac一                    
族は、日本人に同化していく事を希望し、そ                    
してそれは、受け入れられ、同化していった。                    
和歌山の御坊に移ったZdbacの一人は、椎野                    
家と婚姻し、1945年、赤毛の可愛い巻き毛                    
の女の子、マリアが産まれた。その女の子は、                      
エレクトリックピアニストになり、そして後                    
に、飛鳥のユバルZdbac家と婚姻する。                    
                    
 第4章 Zdbac 小崎                   
   
椎野マリアとユバルZdbacの息子、アベル         
は、特殊教育を一歳から三歳まで、和歌山で                    
受けた期間、四国の香川から来ていたZdbac                         
小崎という少年に出会った。もともと結核患                    
者の子供の療養所だった、特殊教育機関で、                    
Zdbac小崎のように、健康な少年は合わず、                    
Zdbac小崎はいつも暴れていた。アベルは、                    
Zdbacの血筋を持った者同士の親近感を覚え、                    
Zdbac小崎が、暴れ、注意されるのを、よく                    
庇った。文化祭で、アベルがエレキギターで、                    
ウ゛ィヴァルディやバルトークを弾き、ヴォ                    
ーカルのZdbac小崎は、発表会場に張り巡ら                    
された、シュールリアリズムの絵画を殴った。                    
アベルがかわりに謝ってその場は済んだ。                    
 アベルとZdbac小崎は、大人になって再会                     
し、PRISONER NO.6というロックバンドを結                    
成した。そして、シュールリアリズム絵画の                    
展覧会での、パフォーマンスで、子供の頃と                    
同じく、アベルがギターシンセサイザーで、                    
ウ゛ィヴァルディやバッハを弾き、Zdbac小                       
崎は絵画を殴った。二人が子供の頃、発表会         
を観ていた紳士達が、その展覧会に大勢居合                    
わせていた。みんなが証人さんだった。                        
 「あの時と、全く同じだ。」                   
と、証人の紳士達は笑い合った。                    
                    
 第5章 Zdbac 瞳                   
                    
 奈良に移ったZdbacのうち、一人は、アフ                   
リカ人と結婚し、娘がユバルに嫁いだ。そし                    
て、もう一人は、ロシア系ユダヤ人と婚姻し、                    
同じくVillageに住んだ。Zdbacユバルの息子、                    
アベルと、ロシア系Zdbacの娘、瞳は同じ学                    
校に入り、クラスメイトになった。アベルの                    
好成績は、すべてZdbac瞳に引き渡した。Zd                      
bac瞳の父は医者で、多額の献金を学校にし                    
ていた。アベルは、ズバ抜けた成績を、Zdb                    
ac瞳に明け渡してからロックバンドで、エレ                    
キギターにその不条理の怒りをぶちまけた。                    
Zdbac瞳は、女子大を出てからポルシェを乗                   
   
り回していた。         
                    
 第6章 Zdbac少年                       
                    
 アベルが、もはやベテランのロックミュー                   
ジシャンになり、対バンした若いバンドの中                    
に、キラリと光る少年がいた。楽屋の壁に頭                    
をぶつけてウォーミングアップする、この少                    
年のバンドは、明らかに他の若手のバンドと                    
は違っていた。手本とする先輩のバンドを何                    
一つ持たない。モダンジャズのドラムと、イ                    
レギュラーチューニングでツインギターの効                    
果を出すギター、そして挑発的なアクション                    
で客にアピールする、このヴォーカルの少年                    
のバンドの演奏は、明らかにオリジナルの20                      
00年代の、新、新人類の音楽だった。                    
 打ち上げで、その少年は、隣の女の子に、                   
 「俺はZdbacだ。」                   
と、語りかけた。アベルは、また一人、Zdba                    
cに出会った。Zdbac少年のバンドのドラマー                      
洋輔は、アベルのバンドでもドラムを叩くよ         
うになり、洋輔は二人のZdbacの間を行き来                    
し、二人を良く観察していった。                        
 Zdbac少年と洋輔のバンドは、ヨーロッパ                   
ツアーを成功させ、洋輔はアベルのバンドを                    
去った。                    
                    
 第7章 Uncle Zdbac                   
                    
 著名なブリティッシュロックギタリストが、                   
日本人のZdbacにアピールするために、来日                    
した。もはや老齢のそのロックギタリストは、                    
 「自分はZdbacだ。」                   
と、日本の記者に会見した。                    
 たった一晩だけの再結成コンサートの後、                     
日本に来たそのZdbacは、極東の島国に同化                    
したZdbacに対して、一体どんな思いを抱い                    
ていたのだろう。                    
 日本のZdbacは全て、日本国籍を持った日                   
本人である。                                
   
Zdbacは日本への同化に成功した。         
                    
                        
 第7部                   
 Zimmy Zdbac                   
                    
 第1章 Go back to Pleiades                   
                    
 「やあJohann君、お目にかかれて嬉しいよ                   
。」                    
 「僕は、Zimmy Zdbac。君の従兄弟さ。」                   
その、プレイアデス星人は、アベルの最初の                    
洗礼名、Johann Zdbacの名で、アベルを呼ん                    
だ。                    
 その頃、プレイアデス星と地球の往復には、                     
三時間かかった。Zimmyという愛称で知られ                    
る、スペル文字では書き表せない名前を持っ                    
た、そのプレイアデス人は、Zdbacというホ                    
ームネームを持っていた。BC13世紀に地球                    
に渡ったZdbacと、同じ名前である。Zimmy                        
は、ミュージシャンの星、プレイアデス星の         
音楽プロデューサーであり、かつマネージャ                    
ーとして、地球人にも良く知られる存在であ                        
る。Zimmyは優秀な素質のあるミュージシャ                    
ンを、よくプレイアデス星に連れて行き、プ                    
レイアデス星で音楽修行させ、その後、地球                    
に帰らせ、ミュージシャンとして成功させる。                    
それが、彼の仕事である。                    
 1977年、Zimmyの宇宙飛行船は、日本に渡                   
り、二人の日本人の男の子と、一人の女の子                    
を宇宙船に招待した。一人の男の子は、もう                    
中学生で、飛行船に乗るのは二度目だった。                    
SATORUという名のその男の子は、Zimmyと                    
は親しく、SATORUは、殊にUFOのコクピッ                    
トを、物珍しくは思ってないようで、Zimmy                      
との共通の知人について話し合っていた。も                    
う一人が、11歳の日系ユダヤ人、アベルだっ                    
た。アベルはコクピットを物珍しく見て、コ                    
クピットの音に、深い興味を示した。もう一                    
人の女の子、麗子は、アベルがUFOのステー                     
ジライトに乗るのにつられて、同じスポット         
ライトを遠隔で受けていて一緒に乗った。ア                    
ベルと麗子の家は、車で一時間以上かかる距                        
離だったが、同じスポットライトを二重に二                    
人は視ていて、アベルがスポットライトに乗                    
るのは、麗子には見えていた。麗子はコクピ                    
ットの音がうるさい、と言い、コクピットの                    
音は、アベルにしか聴こえなくなった。その                    
音は、シンセサイザーが何重にも自動演奏し                    
ているような音だった。Zimmyは、アベルが                    
大人になったら、アベルのシンセサイザーで                    
この音を再現する、と予告した。                    
                    
 第2章 The Mission Lucifer Rising                   
                      
 第1節 契約                   
                    
 西暦1975年、プレイアデスとルシファー                   
の間にトラブルが生じ、プレイアデス星に大                    
地震が起きた。その時、プレイアデス星でリ                      
ハーサルをしていた、the band KLAATUは、         
その地震を体験し、ひび割れたプレイアデス                    
の神殿のスケッチを、LPレコードのジャケッ                        
トに使った。                    
 1977年、地球人の、Johann Zdbac、アベル                   
が、プレイアデス星のマネージャーZimmy                    
Zdbacに招かれて、プレイアデス星に到着し                    
た。晩餐会で、Zimmy Zdbacは、                    
 「二年前、大地震が起きたんだ。やっと修                   
復が終わったんだ。それで君を招いたってわ                    
けさ。まったくルシファーの奴ら無茶苦茶し                    
やがる。」                    
と、ぼやいた。そして、宴も闌になって、                    
Zimmy Zdbacは、地球の従兄弟として、Joha                    
nn Zdbac、アベルに、                      
 「Johann君、ルシファー役を演じてくれな                   
いかね。」                    
と、オファーした。John Matthewとして、三                    
歳で既に、牧師の資格を取っていた、十一歳                    
のJohann、アベルに、ルシファーの役を地球                      
で演じるよう、アベルは頼まれた。アベルは、         
これから自分にどんな災難が起こるか解らず                    
に、その親切なプレイアデス星人でありかつ、                        
プレイアデス星の従兄弟、Zimmy Zdbacの申                    
し出を受け入れた。そして、プレイアデスと                    
ルシファーは再契約した。                    
 アベルは16歳でST.ANDREW churchと契約                   
し、様々なMissionを行った。それはまるで、                    
天使が堕天使として、地べたを這いずり廻る                    
ような思いだった。                    
                    
 第2節 ルシファーライジング                   
                    
 ケネスアンガーの『ルシファーライジング                   
』。そのルシフェルの昇天の映画が、Johann                      
、アベルの演ずるストーリーだった。火山の                    
噴火する山で、溶岩が流れ、女が祭壇で、松                    
明を燃やす。タロットカードを切り、魔法陣                    
で踊る祭司。そしてオシリスとイシスが、遠                    
方で合図し、二人が神殿に並ぶと、UFOが二                    
人の頭上に飛ぶ。         
 アベルにとって、イシスのような、日本の                   
女神、洋美に出逢った日々、そしてアベルと                        
洋美が、長谷寺を並んで歩くと、UFOが二人                    
の頭上を飛んだ。                    
 2008年、アベルの葬儀が、韓国で行われた。                   
その葬儀の夜、アベルを大天使ルシフェルと                    
呼ぶ、女天使達は、次々と、一人また一人ず                    
つアベルの前に顕われた。その日本人の女天                    
使達は、アベルが親指と人差し指を鳴らす度                    
に、一人、また一人ずつ、Villageの天空に舞                    
い上がっていった。その女天使の数は、ちょ                    
うど46人だった。女天使達は、徐々にVillage                    
の星空に上がっていき、そして天国へと昇っ                    
ていった。アベルは、その46人の女天使達を                      
リアルでは誰も知らない。                    
 そして、Zimmy Zdbacは、プレイアデス星                   
への、アベルの『S.O.S』のサインを受け、                    
アベルの前に顕われた。そして彼は、アベル                    
のルシフェル役の終わりを告げた。アベルの                     
ルシファーとしてのMissionは完了した。         
                    
 第3章 プロデューサー Zimmy Zdbac                       
                    
 同じ、Zdbac。Zdbac家は1911年に世界中                   
に離散した、ハプスブルグ家の公爵家だった。                    
Zdbacの歴史は、旧約聖書のアベルまで遡る。                    
アベルは、BC13世紀に、地球に渡って来た                    
プレイアデス星人だった。アベルの兄カインの子孫には、                    
ユバルという琴の名手が、旧約聖書に書き記                    
されている。                    
 世界中に離散したZdbacは、1970年代、様                   
々な有名ミュージシャンを輩出した。Zimmy                    
Zdbacは、音楽の惑星プレイアデス星から、                    
ミュージックオーガナイザーとして、彼らを                      
指導していった。                    
 西暦1975年、ルシファーとプレイアデス                   
との間の契約に、トラブルが生じ、プレイア                    
デスはルシファーに壊滅的な打撃を被った。                    
Zimmy Zdbacは、地球のZdbacのミュージシ                     
ャンや、Zimmyが手がけた有名ミュージシャ         
ン全員に、悉く、                    
 「ルシファー役をやらないか。」                       
という、Zimmyの申し出を断られていた。Zi                    
mmyはアベルに、ルシファー役を演ってもら                    
いたい、と頼んだ。アベルはその後、自分の                    
身にどんな災難が降り掛かるか解らないまま、                    
承知した。                    
 シリウスの王妃への謁見を済ますと、アベ                   
ルは、プレイアデス星で音楽修行をしないか                    
と、Zimmyから言われた。アベルはそうした                    
かった。しかし、一緒にスペースシップに、                    
乗って来た麗子が、                    
 「帰りたい。一緒に連れて帰ってくれなき                   
ゃいや。」                      
と、泣き出した。スペースシップは、朝7時、                    
地球に還ってきた。                    
                    
 麗子とアベルは子供同士のお見合いをする                   
事になった。同じ神隠しにあった者同士の縁                     
談だった。アベルの隣人は、アベルの巻き髪         
に有機肥料をかけ、アベルの母が、泣きなが                    
ら、アベルの髪を切った。お見合いはキャン                        
セルした。                    
                    
 第4章 三度目の葬儀の後                   
                    
 2008年に、JOHN MATTHEWの三度目の葬                   
儀が、韓国で行われた後、その夜、アベルを                    
大天使ルシフェルと呼ぶ、46人の女天使達が、                    
Villageの天空に舞い上がった。それから、ア                    
ベルは、毎夜、羽のついた女天使達や、洋美                    
や、女官の霊達に、好きなようにされていた。                    
その時、大きな龍が、アベルの部屋に浮遊し                    
ていた。その雌の龍は、アベルの精を吸い込                      
み、受胎し、六匹の龍を、シリウス星で産ん                    
だ。                    
 Zimmy Zdbacは、アベルを監視するシリウ                   
ス星人達を、悉く追い払った。                  
   
 第8部         
 AKASHIC LOVE RECORDS                   
                        
 第1章 始まりはBAY CITY ROLLERS                   
                    
 初めに言葉ありき。それは、S-A-T-U-R-D-                   
A-Y-NIGHTだった。亡霊と遊ぶ10歳のアベル                    
にとって、ラジオから流れる、BAY CITY ROL                    
LERSの爽やかなメロディーは、まるで悪霊を                    
払うキリスト教の光だった。後に15歳で入学                    
したST.ANDREW'S BOY'S HIGHSCHOOLは、ス                    
コットランドの教会、アンデレ教会の学校だ                    
った。BAY CITY ROLLERSの様々な名曲は、10                    
歳のアベルにとっては、聖歌に近い音楽だっ                    
たし、今も多くの大きな子供を持った大人の                      
女性達と同様、聖歌である。それは愛の伝導、                    
としてのキリスト教の布教に他ならなかった。                    
                    
 第2章 QUEEN、BOSTON、STYXそして女                    
     の子達とマリエンヌ                        
   
10歳のアベルは、ひたすらラジオを聴き         
まくった。ラジオから流れてくる洋楽は、ど                    
れも天界の音楽のように聴こえた。そしてシ                        
ングルレコードを買い、LPレコードまで買っ                    
た。11歳になった時、新聞配達のバイト代で                    
グレコのJEFF BECKモデルの黒のレスポール                    
を手に入れた。レコード棚は次第に、LPレコ                    
ードで埋もれていった。QUEENのFIRSTからN                    
EWS OF THE WORLDまでのLPを全部集め、愛                    
聴した。そしてBOSTONのDON'T LOOK BACK                    
やSTYXのPIECES OF EIGHTのLPがいつもター                    
ンテーブルに載せられた。12歳になった時、                    
突然、六畳間の二階のアベルの自室に、マリ                    
エンヌを含む六人の女の子が遊びに来た。テ                    
レコにわぁーわぁー叫び、吹き込んで帰って                      
行った。                    
 そういうレコードに浸った毎日は、次第に、                   
VAN DER GRAAF GENERATORのようなマニア                    
ックなレコードコレクションに変容していっ                    
た。                                    
   
 第3章 VAN DER GRAAF GENERATOR         
                    
 ピーターハミルの歌う絶望の中の希望とは、                       
ちょうどカミュの異邦人の形而上学として発                    
表された『シーシュポスの神話』における、                    
深い絶望の中の希望と一致する。ギリシャ神                    
話の中のシーシュポスは、冥界から地上に、
そしてまた、地上から冥界に、帰ってくる事
を条件に、一時、地上に戻る事を神から許さ
れたが、許可時間内を過ぎても、冥界に帰ら
なかった罰として、山の頂上に大きな石を運
び、頂上に達しては、またその大きな石は麓
まで転び落ち、そしてまた、シーシュポスは
大きな石を山の頂上まで運び上げる繰り返し
が永遠に続く、という重い刑罰を課せられた。
カミュは、その不条理ゆえに神を否定し続け
る自由がシーシュポス像にある、と、シーシ
ュポスの喜びと希望を謳う。しかし、その世
界像には、神が居る事が前提なのであり、反
抗すべき神の不在した世界では、その不条理
だけが、野ざらしにある、希望なき不条理だけ
なのである。ハミルは、善玉の天使、ヒンメル
として、神が存在するのを無条件に前提して、
善玉の天使として神に甘える。
  ハミルに、ユダヤキリスト教の神が存在                    
するのは、大前提であり、それゆえ善玉の天                    
使として、その正当性を世に問い続け、そし                    
て世界の人々は、VAN DER GRAAF GENERAT                    
ORを認知こそすれ、買わなかった。ハミルに                    
は、狡猾な商売はふさわしくない。神を否定                    
するシーシュポスの如き、ヨーロッパ中をツ                    
アーして廻るハミルの永遠運動が、アメリカ                    
で商業的成功を収める事はなかった。ハミル                    
の謳う、反抗すべき神の存在が、アメリカに                    
はなかったからであり、そこには、野ざらし                    
の神なき不条理、希望なきシーシュポスがあ                      
ったのみなのである。                    
 代わりに、商業的成功を収めたのは、ルシ                   
ファーとしての悪魔を狡猾に演じ、ひたすら                    
商売に徹した、ジミーペイジであり、ディオ                    
ニソスとしての、自分を自覚した、ロバート                      
フィリップである事は、言うまでもない。神         
なき世界では、悪魔にドルが落とされるのが                    
自明であり、それを見抜き、ルシファーを演                       
じたジミーペイジの勝利だった。                    
                    
 第4章 ARTBERASとヘーゲル論理学                   
                    
 HENRY COWのクリスカトラーが、フレッド                   
フリス、ダグマークラウゼと結成したART BE                    
ARSのレコードに関して、クリスカトラーは、                    
ヘーゲル弁証法を用いて説明した。ヘーゲル                    
論理学における弁証法とは、主観的主観、主                    
観的客観、客観的主観、客観的客観の四つの                    
段階が、止揚され、螺旋状に認識が上がって                    
行くものであり、ART BEARSの三枚のレコー                      
ド、HOPES & FEARS、WINTER SONGS、THE                     
WORLD AS IT IS TODAY、は、それぞれ、主観                    
的客観、客観的主観、客観的客観だと、彼は、                    
カトラー家を訪れた、故北村昌士氏に答えた。                    
アベルは十三歳の時、ヘーゲル論理学の実践                      
数学を解いた。その数学問題集は、四つの弁         
証法が交互に螺旋状に上がって行く、抽象的                    
思考を養うものであり、それは、まさしく子                        
供のためのヘーゲルだった。その中で、いつ                    
も客観的客観として解く問題は、中卒の両親                    
の子供である、アベルが、将来到底扱う事の                    
ない、東京大で使うような、統計数学だった。                    
クリスカトラーが客観的客観と称する、THE                    
WORLD AS IT IS TODAYの裏ジャケットには、                    
原爆が落とされる、自由の女神が描かれてあ                    
り、ダグマークラウゼの甲高い声で揶揄され                    
るDEMOCRACYなど、十七歳のアベルには、                    
震撼を憶えるものだっただけではなく、哲学                    
徒になった、二十歳のアベルの前に、恩師の                    
先生、武市健人の著作、『ヘーゲル、非情の                      
哲学』という題名に出逢った時も、またして                    
もヘーゲルの論理学に震撼させられた。                    
                    
 第5章 HENRY COWとマルクスそしてスタ                   
     ーリン批判                              
   
 HENRY COWのUNRESTを手に入れたのは、         
アベルが、十四歳の時だった。子供には背伸                    
びし過ぎた、その前衛ジャズロックを理解す                        
る機会は、いとも簡単に訪れた。部屋の小さ                    
な白黒TVに、ちょうどUNRESTをかけていた                    
時間に流れた、NHKのニュース映像だった。                    
ポーランドに戒厳令が敷かれ、ソ連の軍隊が、                    
ポーランドを制圧している映像だった。HENR                    
Y COWのUNRESTは、まさに、ポーランドの連                    
帯が、ソ連にはむかい、戦車に押し潰されて                    
行く、そんな状況に対する、不安、だった。                    
マルクス、そしてスターリニズムとスターリ                    
ン批判、岩谷宏氏が、ロック雑誌を読む、子                    
供向けに説く文章は、アベルには難解ではな                   
かった。ヒットチャートを賑わすロック音楽                      
は、すでに、十四歳のアベルのターンテーブ                    
ルには載らなかった。マルクス。十九歳のア                    
ベルは必死に、資本論の第一巻を読んだ。社                    
会科学研究会で読み進む、『商品論』におけ                    
る貨幣の起こり方は、ドフトエフスキーの『                     
大審問官』に通ずる問題を感じた。そして、         
後に読んだ、埴谷雄高の著作における、スタ                    
ーリン批判に、一党独裁政権の問題を、子供                        
に論じた、岩谷宏氏の言いたかった事が、全                    
て理解できた。                    
                    
 第6章 マルクスとそれ以後ーHELDON、                   
     裸のラリーズ               
                    
 1968年のカルチェラタン世界全共闘運動を                   
象徴するロックバンドとして、アメリカのGR                    
ATEFUL DEAD、フランスのHELDON、日本の                    
裸のラリーズ、は大学のバリケード内での演                    
奏がキャリアの出発点である事から、類似し                    
た性質を持つバンドである。'68年は、ヴェ                      
トナム反戦運動、中国の毛沢東の文化大革命、                    
そして、プラハの春、が世界中を駆け巡り、                    
世界中の学生が蜂起した。そして、HELDON                    
と裸のラリーズは、そのノイジーな暴音故、                    
共通項も多い。サルトルの主体的自由論が、                  
弁証法的理性批判として、ただフランス共産         
党イデオローグに、革命的に批判的にあろう                    
としたシチュアシオン(状況)は、構造主義                        
によって、時代遅れになりつつあった。文化                    
人類学者や心理学者に、もてはやされた構造                    
主義が、経済哲学の分野では、ほとんどアル                    
チュセールのマルクス主義的構造主義によっ                    
て、独占されていた。アルチュセールの専制                    
的な、構造主義的マルクスは、フランス共産                    
党の上層部へと上がって行く、全てのフラン                    
スエリートインテリゲンチアの源、高等師範                    
学校の哲学教授をして、フランス思想界の、                    
独裁スターリニズムとして、'68年のカルチェ                    
ラタンの、格好の攻撃対象となった。その頃、                    
ジルドゥルーズは心理学者フェリックスガタ                      
リとともに、専制的マルクス哲学者アルチュ                    
セールと、構造主義的心理学者ラカンに対す                    
る、アンチテーゼとして、'68年の思想を、                    
『アンチオイディプス』に書き留めた。HEL                    
DONのリシャールピナスは、ジルドゥルーズ            
の下で、哲学を学ぶ、若き哲学研究者だった。         
フランス唯物論を更に先鋭化した、彼の金属                    
論は、HELDONの鉱物的金属質の音楽のベー                        
スとなる、形而上学である。そのシークエン                    
サーと同時に刻まれる、生のドラムスとウ゛                    
ァイオレントなギターの即興演奏が模索する                    
世界は、構造主義から逃れようとする、自由                    
への渇望、であり、ポスト構造主義の音楽と                    
は、HELDONそのものに他ならない。                    
 1983年に、アベルが、京大西部講堂で観た、                   
裸のラリーズもまた、京都のカルチェラタン                    
の象徴であった。水谷孝氏のヴェルヴェット                    
アンダーグランドを思わせる、スタイリッシ                    
ュな感覚が貫かれた、OHPとスライドが交差                    
する、映像を伴ったショーは、轟音とエコー                      
のかかった、'68年の音以外の、何物でもない。                    
 マルクスの研究は、初期草稿に重点を置い                   
た、エルンストブロッホや、自然主義哲学と                    
して、GREENに影響を与えた、A.シュミット                    
らの円環的自然主義、唯心論と唯物論の円環           
的形而上学と、フランスでは、デリダのマル         
クス葬送論により、ちょうどソ連が終わる頃、                    
帰結した。                        
                    
 第7章 RUSH ーシリウスの僧侶達                   
                    
 シリウス星人は、プレイアデス星人と共に、                   
小熊座、大熊座に位置するルシファーのサタ                    
ンの惑星と敵対する。かつては、太陽系は、                    
それぞれの惑星にも知的生命体がいて、地球                    
は楽園として、中立であり続け、様々な天使                    
やルシファーが、様々な同盟や争いを起こす。                    
 西暦2012年、ジョージオーウェルが1984                   
で預言した、管理社会が、既に2012年に完成                    
され、そこには、必然性の自由のみしかなか                      
った。                    
 或る若者が、ギターを発掘し、                   
 「何だ、この音は?」                   
と、驚嘆する場面より、RUSHの西暦2012年                    
三部作が始まる。プレイアデスはミュージシ   
ャンの星である。もし、シリウス人達が、超         
管理社会を地球に張り巡らせるのに、成功し                    
ても、音楽が否定されるのならば、プレイア                        
デス星から転生した、地球のプレイアデス人                    
の、本来の才能が発揮されない。そこで、追                    
放されたルシファーと、プレイアデスの盟約                    
で起こるのが、三部作最後の、神々の戦い、                    
であり、再びTUNEを取り戻すためのバトルを、                    
RUSHは、たったスリーピースで表現する。R                    
USHの、哲学的な、SFハードロックは、十三                    
歳のアベルを虜にした。                    
                    
 第8章 LED ZEPPELINー愛の布教師として                   
     のルシファー               
                      
 猥褻な、ダヴル、トリプルミーニングを駆                   
使したギャグで歌われる、LED ZEPPELINの愛                    
とは、身体的な色欲にこそ、本来の精神的な                    
LOVEに行き着くことを、布教する。それは、                    
インドのヨギが教える、慈悲の世界を、誤っ           
て解釈された、何物か、に通ずるものがある。         
LED ZEPPELINとは、ルシファーが神と戯れ、                    
そして、愛をルシファーのやり方で教える。                        
方法が間違ってはいても、行き着くところは、                    
普遍的な愛なのである。LED ZEPPELIN DVDで                    
観れる彼らの映像と音は、あらゆる意味で、                    
男女問わず、性欲を刺激する。そのEROSとは、                    
最終的に解脱するための、手段と方法の一つ                    
なのかもしれない。                    
                    
 第9章 東洋と西洋の折衷する形而上学                   
     ーTANGERINE DREAM               
                    
 西田幾多郎氏の、絶対無の形而上学とは、                   
中心に絶対無を置き、主体と客体が、円環的                      
に相互作用する、画期的な形而上学である。                    
ヘーゲルーフィヒテーシェリングの、彼のド                    
イツ観念論の研究の果ての、仏教的アプロー                    
チとして収めた、形而上学的成功であった。                    
 ユダヤーキリスト教の流れでも、初期マル     
クスの、唯心論と唯物論、主体と客体の円環         
的形而上学、エルンストブロッホにおける、                    
中心をSEIN(存在)とした、主体と客体の円                        
環的弁証法。ハイデッガーのSEIN UND ZEIT                    
に於ける、SEIN(存在)を本質として、追求                    
する、キリスト教的アプローチ。サルトルの                    
実存哲学が、主観的に、存在と無について、                    
現象学的アプローチを行ったのは、記憶に新                    
しい。仏教の経典では、有る、も、無い、も                    
同じと、良く説かれる。マナ識は、マイナス                    
Xマイナス=+である。その意味で、西田哲学                    
と、エルンストブロッホの形而上学は、グロ                    
ーバルな形而上学である。                    
 TANGERINE DREAMのリーダー、EDGAR FRO                   
ESEは、旧社会主義圏の、東欧からの亡命者                      
で、1960年代後半に、サリバドールダリ氏の                    
邸宅で、サイケデリックバンドの活動をして                    
いたのが、キャリアの最初である。東欧は、                    
中世ヨーロッパでは、ボヘミアと呼ばれ、異                    
教的色彩の濃い地方であった。東洋と西洋の               
折衷する神秘思想の国、ボヘミア。ユング心         
理学を持ち出すまでもなく、西洋と東洋の潜                    
在意識は、もともとグローバルなものなので                        
ある。                    
                    
 第10章 REQUIEM FOR MOTHER of アベル                   
      ーエレクトリックピアニスト              
      椎野マリア              
                    
 まだ、10代後半の女の子が、ジャズバンド                   
のエレクトリックピアノを弾きまくり、グラ                    
ンドピアノの鍵を次から次へと、切りまくる                   
演奏は、圧巻だった。アベルの母、椎野マリ                    
アの若かりし日の姿である。アベルの母は、                   
モデルとしても人気があり、アベルの母の所                      
属するジャズバンドは、大きなホールも満員                    
にした。小さな編成のバンドのライヴでは、                    
気が向けば、弾き語りもしたという。                    
 アベルが、小さい頃、アベルの母の実家で、                   
観た、アベルの母の若かりし日の写真は、ア                  
ベルにとっての母とは、全くの別人だった。         
様々なドレスを身に纏い、高価な宝石を身に                    
つけ、毎回、ヘアドレッサーやメイクの手が                        
懸かった、豪華なセットで、撮影された写真                    
の数々。アベルの母が、一体何者であったか                    
は、アベルには、未だもって、謎である。                    
 アベルの母、マリアは、人気が臨界点に達                                   
 する直前に、失踪した。モデルとしても、ピ
アニストとしても、全て二十歳になる、直前                    
に辞めた。和歌山の御坊の山谷にある、実家                    
に戻り、後を絶たない、業界からの復帰の催                    
促を、裁ち切るかのように、高取城城下町の                    
材木問屋の家政婦になり、アベルの父と結納                    
を交わした。                    
 アベルの母の、嫁入り道具は、トラック一                     
台充分あった。もちろんエレキピアノもあっ                    
たし、アベルの母が衣装で使った、ドレス類                    
は、山ほどタンスに入れられ持ち込まれた。                    
しかし、戒律に厳しい姑、トミノが、全て実                    
家に返させ、若かりし日の母を偲ぶものは、             
ほとんど残されなかった。         
 晩年のアベルの母は、家の庭を花畑にする                   
毎日だった。アベルが、ピアノを弾きだした                        
とき、一度、アベルの母は、                    
 「あんたの後生大事に聴いている音楽は、                   
たいした事ない。」                    
と、ピアニストの先輩として、忠告してくれ                    
た事が、あった。死の直前に至っても、アベ                    
ルの母は、何も語らなかった。アベルの弾く                    
ピアノが、神戸のJAZZ LIVE HOUSEのマスタ                    
ーから、ピアノの弾き方まで椎野マリアに、                    
そっくりだ、と指摘された時点で、アベルと、                    
アベルの母の、全て隠された果ての、遺伝子                    
は開花していた。                    
 アベルの母の納骨を済ませた、最初の夏、                     
仏壇のある部屋で寝ていた、アベルの前で、                    
亡き、アベルの母の若かりし日の姿が、映像                    
として、一晩中映された。まるで、高貴な貴                    
婦人かのように、映る、その昔の若い婦人が、                    
アベルの母親になる人とは思えず、何故、              
60'sの婦人が自分の前に映し出されるのか、         
理解できなかった。様々なLIVE演奏が、映し                    
出された。アベルの生まれるずっと前のJAZZ                        
のLIVEの映像ばかりだった。                    
 朝、アベルが目覚めたとき、その夢に出た                   
婦人と、自分が子供の頃見た、アベルの母の                   
写真が一致した。                    
 アベルの奏でる、音楽は、既に、母マリア                   
の代から続いている、一種のDNA MUSICなの                    
かもしれない。その遺伝子の発掘の旅は、一                    
体何処まで、続くのであろうか?。                    
                    
                    
 第9部                   
 CODA                     
                    
 アフィン幾何学とは、疑似空間を作る、数                   
式である。それは、射影幾何学との関係で、                    
Hyperplane at infinity無限遠超平面、という                    
拡がりをもつ数学である。この、疑似空間の               
作り方である、数式は、多くの宗教団体に、         
利用されている。1980年代に入って、野水                    
克己氏より、『アフィンはめ込み』と、呼ば                        
る、数量化が起こった。γ=0の時、クシー                    
は、等積、という理論は、これも、多くの宗                    
教団体に、利用された。アフィン微分幾何学                    
の数量化は、後に、Blaschke超曲面に発展し                    
ていった。アベルは、Blaschke超曲面の数式                    
から、MとCを、経済学図式に当てはめてみた。                    
すると、球面経済学図式が出来上がった。                    
 射影幾何学が、球面の中で、SS、SP、PS、                   
PPを錯綜させている。それは、ライプニッツ                    
のモナドだった。アベルは42歳で、ライプニ                    
ッツのモナドに辿り着いた。                    
 I Macからは、GRATEFUL DEADのLIVE盤が                     
鳴り続けている。さあ、アベルはこれから、                    
何処へ行こうか?。                    
                    
                    
                fin                  
               
                                                        
                                      
                    
                    
                   
                    
                                                      

      
                    
                    








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ルル

ルル
            弓武声慧

 春の或る日、猫が家に迷い込んで来た。ゴミ箱を漁るその猫は、最初は野良猫かと思えた。すぐ保健所に連絡した。
 「野良猫の捕獲はもうやっておりません。野良猫なら、餌をやらないと、逃げて行きます。」
その保健所の職員の、電話越しの口調は、何かもどかしかった。
 ヨハンと父は、野良猫に餌をやらなかった。すると、数日経っても猫は、納屋の、古い風呂桶のなかで、丸くなって、元気をなくしていった。死にそうな小さな声をあげている。
 「やばい、この猫は、元飼い猫だ、餌をやらなかったら、動物虐待になってしまう。」
ヨハンは、急いで、冷蔵庫から缶詰をだしてきて、そのフレークの缶詰を猫にあげた。元気無く、それでも、缶詰のフレークを一生懸命食べる猫の姿を観て、飼い猫を我が家に捨てる、身勝手な元飼い主に、猛烈な怒りを感じた。
 定期的に餌をやっているうちに、猫は次第に元気を取り戻して行った。納屋の鼠を取って食べたりもする、その猫を、父もヨハンも、家で飼おうか、と感じ始めていた。猫は、次第に、体格が良くなり出した。でも、その猫をなんて呼んだらいいのかわからない。
 「プクプクちゃん、って呼ぼうか?」
すると、猫は、
 「フンギャー」
と、怒る。
 「猫ちゃん、猫ちゃん。あんたのお名前何ていうの?」
 ヨハンは、或る夜、玄関の土間に、ちょこっと座っている、猫を相手に、或る占いで、猫の名前を当ててみた。アルファベットのRが二つ出た。
 「RR?」
 「ルル?」
猫は、ヨハンを何か気味悪げに、観た。自分の名前を当てた、この人間を怖そうに、後ずさりした。
 そういえば、猫が家に迷い込んで来た日、庭の畑の向こうで、
 「ルル。あの家にもらってもらいなさい。」
という、女の声が聴こえた事がある。吉野の住宅地の不良債権者が、大きくなって、邪魔になった、元子猫を、捨てにきたのだ。猫は雌で、閉経手術が施してある。おそらく、何らかの、血統書付きの猫を、ペットショップで買ったのだろう。大きな家を、田舎で建て、住宅ローンが払えなくなって、猫が邪魔になったのだ。そんな、身勝手な元飼い主に、再び、強い怒りをヨハンは覚えた。
 ヨハンは、そんな住宅地の不良債権者らを、
 「ざまあみろ。」
と、思う。大阪では、安アパートでしか暮らせなかったくせに、見栄を張って、ど田舎に豪邸を建て、払える目処も立たない、マイホームローンを組み、田舎で、
 「私たちは都会人だ。」
と、ふんぞり返っている、似非マダムたちに、心底腹を立てていた。田舎には、田舎の秩序がある。新興住宅地の人々等は、田舎の秩序を悉く破壊していく。
 ヨハンが子供の頃書いた、漫画の原作の著作権料を、新興住宅地の、オバタリアンは、仲介すると言って、何億も横領し続けた。立派な犯罪である。オバタリアン達は、横領を隠蔽するために、娘達のうち誰かを、ヨハンと一緒にさせ、横領を隠蔽したままにしようと企んでいた。勘の良い、ヨハンは、そんなオバタリアン達の思い通りになるわけがない。オバタリアン達の娘達からは、なるべく遠ざかる事にした。そして、オバタリアン達に嫌がらせするように、偏差値を下げ、京都の夜間大学に通った。
 2年がかりで、卒業論文を書くつもりで、実家に戻った、ヨハンに、オバタリアン達は、罵詈雑言を浴びせ続けた。そして、横領した金で、ラジオ番組のスポンサーになり、膨大な投書とともに、番組を数分間乗っ取り、DJにヨハンの個人攻撃をさせた。そのDJは、伝説の子供アニメ原作者、ヨハンを、土曜の夜のアニメファン向けの、ラジオ番組で、隠れたスターに祭り上げていた。汚い、夜間大学の学生活動家になったヨハンに、
 「死んで下さい。○○○○。」
とまで、実名入りで、放送した。
 オバタリアン達は、横領や、ヨハンへの人権侵害の証拠を一切残さなかった。罵詈雑言を浴びせ続ける、オバタリアン達のドヤし声を録音しようとすると、声楽家出身の耳が良い、オバタリアンの首謀者が、急に、大声を止めた。
 もはや、重度の精神病を患ったヨハンの証言に信憑性はない。オバタリアン達は、横領が発覚せずじまいで、ヨハンを廃人に追いやった成功を、凱歌と共に、乾杯した。ヨハンは自殺未遂した。
 オバタリアン達の犯罪は、数回にも渡る、何億もの横領と、殺人未遂、人権侵害である。
 ヨハンは、リハビリを続けたが、オバタリアン達は、執拗に、ヨハンの就労を妨害し続けた。そして、やはり、罵詈雑言を首謀者の家まで来て、向いで休んでいる、ヨハンの安住権を妨害し続けた。
 あれから、20年が経ち、横領した金で、贅沢三昧を覚え、贅沢な暮らしが辞められなかった、オバタリアン達は、全員自己破産した。
 ヨハンは、アルバイトに出ながら、ルルの缶詰を、ドラッグストアで購入する。ルルは、良い餌しか食べない。ルルを観ながら、捨てた元飼い主と、自分が一度殺された、破産した、オバタリアン達が交差し、憤りと、そして、今や自己破産者となった、横領迫害者達を、憐れむのである。

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続々ブラントゥーシュ教諭

続々ブラントゥーシュ教諭
           弓武声慧

 いつものように、共存党員だらけの、ブラントゥ―シュサークル員達が、主体的に生きようとしている、若者を、酒の肴に、物笑いの種にしていた。ヨハンは怒った。
 「結局、あんた達は、労働について語っても、労働そのものじたいは、否定してるんじゃないですか?それじゃあ、資本家と何ら変わらない。労働に対する視点が、資本家と一緒だと言ってるんです。そうでしょう?結局、あんた達は、労働者を社会の落ちこぼれとして、馬鹿にしてるんでしょう?共産党の一票としか思ってないんでしょう?そんなんで、労働について語っても何の説得力もないよ。批評批評ばかり、客観的な視点に立って、人を馬鹿にしてる人達なんかより、主体的になんか作ってる人の方が偉いよ。あんた達、基本的に人間として間違ってる。そんなんが、共産党なんて笑わせるな。そんなんじゃ、誰も相手にしないよ。馬鹿にすんのもええ加減にしてくれ。」
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映画「赤いアモーレ」について

映画「赤いアモーレ」について

                弓武声慧

 イタリア映画「赤いアモーレ」を観た。或る医者が、ほぼ同時期に、同僚の女医と、売春婦に子供を作らせる。女医はそのまま、健康な女の子を出産するが、自分が、捨てられたと思った、売春婦は、子供を堕胎した。その売春婦は、実の父親に性的な虐待を受けた過去がある。しかも、素人の女の手で、堕胎したので、子宮に後遺症がある。
 女医との間に出来た、女の子はすくすく育ち、柔道選手になる。そんな中、売春婦と再会した医者は、二人で旅に出、旅先で、女医の妻や子供がいるにも関わらず、売春婦にプロポーズする。その瞬間、女は、末期の子宮がんで倒れる。外科医である、医者は、必死に手術するが、医者の必死の努力にも関わらず、女は手遅れの子宮がんで死んでしまう。
 「イタリア」という名前しか知らず、名字すら知らないまま、女を霊柩車で見送る。
 女医との間に出来た女の子は、やがて活発な女の子になるが、ノーヘルでバイクを飛ばし、交通事故に遭い、頭部に損傷を受け、救急病院に運ばれる。両親が付きっきりで、外科手術し、手当するが、娘は、意識を取り戻さない。そんな、病室の窓から、死んだ売春婦が、椅子に座って、最期に履いていた、赤いハイヒールを見せている。意識を取り戻さない娘の病室から、雨が降ってても、売春婦の霊は、椅子に座り、赤いハイヒールで、背中を向けて、雨の中、座り続けている。
 娘が、意識を取り戻した時、売春婦の霊が消える。医者は、形見に持っていた、女のもう一足の赤いハイヒールを、女の霊が座っていた敷石に置き。映画は、イタリアンポップスの長い演奏と共に終わる。
 男と女の関係は、ともすれば、犯罪すれすれである。
 「私は貴方を愛しています。」
などという言葉は、本当に、性と生と死を孕み、その上、死後も付き合い続けるという覚悟がなくては、使ってはいけないのではないだろうか?
 そして、性と生と死と死後の世界まで通ずるものは、それも「愛」以外ない。売春婦は、必死に自分の不治の病を、外科手術する、医者に強い愛を感じ、「許した」のである。
愛と許し。それが、映画「赤いアモーレ」のテーマだったように思われる。
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